裏深き東温、改稿章四十六

石川タプナード雨郎

zOp. 猛禽と謳われたモノ

先の大戦から早五年。

村正の動向を探っていた益子率いる滅葬課であったが

村正への手がかりとなるようなモノ、情報などは一切皆無であった。

だがしかし、ここにきてある物証が発見されたのだ。

正確に言えば物証ではなくサインのようなモノだが

それを認識しているのは我々滅葬課のメンバーと村正だけ。

奴が動き出したのだ!

先の大戦では煮え湯を飲まされ散々だったが次はそうはいかない。

覚悟しておけ!

そう新たに決意を噛み締めた刹那、

益子の端末が振動した。

知らないコードだ。

端末を左耳に近づけ、耳を澄ますと、

「ごきげんよう」

「ちゃんと寝てるのか?」

「顔色が悪いな」

「長生きは出来ないぞ」

貴様は村正!

いい度胸してるじゃないか!

「印は見つけたようだな」

「しばらく休養していたが、仕事を再開しようと思う」

「また顔を合わせる時が来るかもしれないのでご挨拶だ」

「じゃあ」

おい!まてっ!

そこで端末の通信は途絶えた。

あの野郎!

怒りに身を震わせながら側にいた部下の田井中に

こう告げた。

奴が動き出した。

監視レベルを5に引き上げろ!

些細な情報も逃すな!

次に顔を合わせた時がお前の最後だ。

二度目はない!

そうして、こめかみの傷を指で押さえながら

益子はコヒーバの紫煙に身を任せたのだった。

       続く。

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