第2話

 僕が三歳になったときより更に二年。

 五歳となった僕は結構自由に動きまわっていた……と言うのも、三歳児が言葉を発せることを知らず、ずっと喋っていなかった僕は周りの大人から見たらだいぶ心配なことで何かの病気なんじゃないかと疑われていた。

 それを知った僕は慌てて言葉を話し、多少疑われても良いから自分の成長を隠すことなく周りへと打ち明けることに決めた。

 

 ただ、そんな経緯のおかげか。

 どう考えても五歳らしくない行動をとる僕を見ても周りの大人たちは泣いて成長を祝うだけで、何か疑いを向けられることもなかった。

 ……け、計画通りッ!


「おっちに、おっちに」

 

 周りから神童扱いされることにも慣れだした五歳の僕は今、何をしているのかと言うと近距離戦の訓練である。

 僕でも持てる小さな木のナイフを二つ、手に持って訓練場に立って準備運動をしている最中であった。


「準備は万端ですか?アレス様」

 

 僕の前に立つメイド服の女性。

 キラキラと輝く金髪の長い髪に実に透き通ってきれいな碧い瞳を持ち、人間よりも尖がったエルフ特有の長い耳を持つ僕に仕える専属メイドとも言える女性、レリシアが僕の前で木剣を構え、僕に準備の可否を問うてくる。


「うん。問題ないよ」

 

 僕はレリシアの言葉に頷き、自分の手にある二つの短剣を構える。

 

「行きます」

 

 その僕の言葉を聞いて満足に頷いたレリシアは僕との距離を一気に詰めてくる。


「……ッ!」

 

 自分の頭を狙って振るわれる一太刀をジャンプで交わし、続く二の太刀は自身の手にある短剣を使って受け流す。


「まだまだ行きますよ?」


「……ッ」

 

 僕は嵐のように自身へと襲い掛かってくる攻撃の数々を前に僕はただただ防ぎ続ける……僕の短い手足と短い武器じゃどうあがいてもレリシアへと攻撃を当てることなど無理。

 元よりこの訓練は僕の身のこなし、危機察知能力、受け流す力を体で覚える訓練である。


「……んぐっ」


 僕に出来るのはただただ耐えることだけだっ。


「っつぅ」

 

 自分にかかる負担を最小限にして相手の攻撃を受け流す……それが僕の基本方針。

 だが、それに失敗した僕はレリシアの剣から受ける衝撃であっけなく体が痺れ、動きが止まる。


「終わりですね」

 

 動きを止めてしまった僕はレリシアに抱き寄せられる。


「ふごっ!?」 


 そして、そのまま僕はレリシアの豊満なおっぱいへと押し付けられる……ふへへ。ふかふか、柔らかい。良い匂い。

 僕はレリシアのおっぱいの上で下衆な笑みを浮かべる。


「流石は私のアレス様です!その小さな体で五分も持つとは!流石ですー!こんな強くなられて……私は感激です!」


 そんなこと露知らないレリシアはハイテンションに僕を抱きしめたままくるくる回って声を張り上げた。

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