第1話
プトスィの刻時。
それは中世もしくは近世ほどの文明レベルの世界観で、地上に住まう人類を滅ぼそうと侵攻してくる魔王率いる魔族と戦う王道バトルファンタジーゲームである。
剣と魔法の世界で聖剣に認められた勇者たる主人公が作中に出てくる女の子と恋愛フラグを乱立しながら物語が進んでいくのだが、ゲームの最初の方に主人公たちの敵として立ちふさがるのは魔族たちではなく犯罪組織などと言った同じ人間である。
最初の方は学園に入学し、学園で生活する主人公たちが自分の元に舞い込んでくる厄介ごとを四苦八苦しながらこなしていく物語なのだ。
初めて敵として明確に魔族が出てくるのが中ボスであるアレス・フォーエンスを倒した時。
勇者に体を斬られて致命傷を負い、地面に倒れる彼の口から自分たち家族を闇へと誘った魔族の存在が語られるのだ。
アレス・フォーエンスの死去。
それを契機として物語が急速に動き出し、主人公たちは魔族との命がけの戦いに飲み込まれていく……。
「僕の死で物語が動くとかまっぴらごめんだわー。僕は誰にも大きな影響を与えることもなく、ひっそりと平穏に暮らしてひっそりと平穏に死にたい……寿命で死にたい。もう若くして死にたくない」
ゲーム上におけるアレスの享年は16歳である。17歳で死んだ前世の僕よりも早死にだ。
前世と今世合わせて33年しか生きないとか嫌である。
「まずは力だ……何をするにしてもこんな世界じゃ力がなきゃ始まらない」
この世界の理を改変し、自分の望む現象を起こす魔法。
その源となる力が魔力であり、まずはこれを自由自在に操作できるようにならなきゃいけない。
「我が家は公爵家だ……この体の身体スペックはかなり高いはずだ」
魔力の量、そしてそれを扱う素養は基本的に才能で決まる。
優秀な人間と婚姻を結びまくり、優秀な遺伝子を集め続けた貴族家の子供は基本的に優秀であり、貴族の中でも最上位。
僕の生家であるフォーエンス家は公爵家であり、高貴な生まれである僕の才能も最上位であるはず……!
全力で鍛えればそこそこの強さになってくれるはずだ!
「まずは自分の闇落ちフラグを折る……話はそれからだ」
アレス・フォーエンス、三歳。
今日も自分の未来を変えるため、うちの屋敷の図書室で魔法関連の本を読み漁っていた。
あっ、ちなみに言語体系は前世と違うけど、既に覚えた。
言葉の発音は耳で覚えて話せるようになったし、文字の方も図書室にあった簡単な絵本並びに教育の本で覚えた。
この体の頭が優秀なのか、子供の頭が優秀なのか。
爆速で覚えることが出来た。
「あっ!アレス様!またここに!ダメじゃないですか!こんな風に本を広げてちゃ!」
僕の面倒を見てくれているメイドさんが僕のいる図書室へと訪れ、暴れる僕を本から引き離して
「あー!」
「ほら、ベッドのほうに行きますよー」
ここまで来たら僕はもう何も出来ない。
大人しくメイドさんの言うことに従うしかない……。
……ところで三歳ってどれくらいの知性だ?もう喋れるのか?どれくらい喋れるのだ?誰か!誰か!僕に三歳ってどこまでしていいのかを教えてくれ……ッ!
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