思う念力岩をも通す

 マルティオス。本名、マルティオス岩大路いわおおじ

 岩大路はアメリカ人と日本人とのハーフであり、筋肉がとても付いているのだ。

 奴は有名人の護衛をしており、いつもその有名人を守れていることから奴の異名は『岩壁の岩大路』とも言われている。

 何故俺がそいつを知っているのかというと、俺はかつてベテラン俳優である林田晋一はやしだしんいちの暗殺のために、岩大路と戦ったからだ。

 岩大路の筋肉はまるで鉱石。どんなに切り裂いても、撃とうとも、奴は動じなかった。




 「グフフ、誰からやろうかなぁ?」

 マルティオスがこちらに近付く。

 「近付かせるか!ファイアアタック!」

 トロイトが杖から炎を出すも、マルティオスは動じなかった。

 「なんだぁ?マグマより冷たいなぁ」

 「何っ!?炎が効かないだと!」

 「俺はメインディッシュは最後に食べる派なんだ。まずは、柔道着野郎からやるか」

 マルティオスがトサマに襲いかかる。

 「喰らえい!!」

 マルティオスが早いジャブ。トサマはすぐに腕をクロスして自分を守る。

 「はぁっ!」

 「ぐぅぅぅ!」

 それを喰らったトサマは軽く吹き飛ぶも、壁には当たらなかった。

 「くそっ、腕がぁ!」

 しかし、トサマの腕は一発でお釈迦となってしまった。

 「トサマ!」

 「オイオイ、俺を無視するなよ」

 トロイトが回復魔法をしようとするも、杖を取られてしまう。

 「なっ」

 「こいつはお預けだ」

 トロイトの杖を後ろに投げ飛ばし、左手のジャブを飛ばす。

 「なっ、まずい!」

 「はぁぁ!」

 俺は急いでマルティオスの足をスライディングで転ばす。

 「おっと!」

 マルティオスが大の字に倒れ、奴は立ち上がろうとする。

 「けっ、邪魔しやがって」

 「こっちを無視しないで」

 アヤカの矢が奴の目に刺さる。

 「ぐばぁぁぁ!」

 「流石幸運の少女だ。はぁっ!」

 俺は狼狽しているマルティオスの後ろに回り、背中を斬りつける。

 「ぎぃぃぃ!」

 しかし奴の体は岩。まだ耐えていた。

 「糞がぁぁぁ!このガキがぁ!今すぐにでも捻り潰すぅ!」

 マルティオスがこちらを向き、上から拳を振り上げる。

 「死ぬがいぃぃ!」

 (これは、ヤバイか…)

 すると、トサマがこちらに駆け込んでくるではないか。

 「うぉぉぉ!」

 そして、トサマが高く跳び、かかと落としを奴の脳天に決めた。

 「ぎばぁぁぁ!」

 その途端、奴の頭が砕け散った。

 「はぁ…はぁ…」

 トサマは瀕死寸前。俺はすぐにトロイトの杖を探し、それを見つけた。

 「トロイト、早く治してやってくれ」

 「は、はい!」

 トロイトがトサマに回復を施し、トサマは立った。

 「トサマ…」

 「言ったじゃないですか。『俺の使うツミウ流は、岩や骨をも砕く』って」

 「そうか。よくやった…トサマ」

 そして、俺達が洞窟を出ようとしたその時だった。

 「ケケケ、お前は殺すぅ!」

 なんと、先ほど出てきてなかったゴブリンがこちらに襲いかかってきた。

 「くっ、まずい!」

 「生き残りか!」

 万事休す。その時だった。

 「はっ!」

 「ぎゃばっ!」

 そのゴブリンは急に倒れたのだ。

 「誰だ、誰がやった」

 「僕じゃないです」

 「私でもないわ」

 「俺も違います」

 「じゃあ、一体誰が…」

 すると、どこからか声が聞こえた。

 「モーガン。まさか、お前もここ・・に来ていたとはな…」

 「ん?誰だ?」

 「どうしました?」

 「いや、なんでもない。すぐに出よう」

 俺達は洞窟を脱出した。

 外は既に暗かった。

 「もう夜か」

 「じゃあ、どこかで宿を見つけるしかないですね」

 「そうね」

 「ふぁぁ、戦ったからか、すごく眠い」

 三人がそう話しているのをよそに、俺はある者を考えていた。

 (さっきの声…九条ジェシーに似ていた)

 俺はそんな事を考えながら、旅を続けた。

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