いるはずのない怪物

 それからして、例の洞窟に着いた。

 「ここが、あのダハヤシがいる…」

 「そうですね。さっさと倒して、旅を続けましょう」

 「えぇ。悪は無くなった方がいいわ」

 「ダハヤシ、俺の親父の仇だ」

 そして、俺達はそこに入った。

 俺達という客人に出されたのは、ゴブリンであった。

 「グゲゲ、テメェ勇者かぁ?」

 「そうじゃないならなんだ」

 「それならテメェら全員殺すぅ!」

 ナイフを持った一体のゴブリンが襲いかかる。

 「しゃあ!」

 「はぁっ!」

 ゴブリンのナイフと、俺の2本のナイフが鍔迫り合いをする。

 「お前達、かかれぇ!」

 「うしゃあ!」

 「ぎべべ!」

 「ごぎゃぁ!」

 その後ろから、何体ものゴブリンがやってきた。

 「けっ、そっちの数が多いな」

 「死ねぇ!」

 俺の後ろからツルハシを持ったゴブリンが来る。

 「見えてるよ」

 俺は右手のダガーナイフを逆持ちし、後ろのゴブリンに刺す。

 「ぐばぁっ!」

 「なっ!」

 「隙ありぃ!」

 俺は驚いたゴブリンの喉に唐紅に光る短剣を刺す。

 「びえりっ!」

 俺は周りを見渡す。

 「ファイアアタック!」

 「ぐべぇ!」

 「にじけっ!」

 トロイトは炎で蹂躙し。

 「はっ!やっ!」

 「しばっ!」

 「くぬめっ!」

 アヤカは矢をゴブリンの急所に当てていた。

 そして、トサマというと…

 「くっ!」

 「この雑魚が!」

 ピンチであった。

 「トサマぁ!」

 俺は腕に切り傷がいくつも出来たトサマの元へ向かう。しかし、それは杞憂であった。

 「けっ、トサマ流はなぁ…」

 トサマが高くジャンプ。

 「ピンチの時ほど…」

 「高く跳んだ!?」

 「強いんじゃぁ!」

 そして、ゴブリンの脳天にかかと落としを決めた。

 「しびゃッ!」

 それからして、ゴブリン共は何とか全滅。残るはダハヤシのみ。

 「よし、あとは奴だけだ」

 「トサマ、その前に回復を」

 「すまないな」

 俺達は洞窟の奥に行く。しかし、そこに怪物の影は無かった。

 「どこだ!ダハヤシぃ!」

 「グフフ、ダハヤシは死んだ」

 「ッ!?」

 そこにいたのは、約2メートルほどの岩で出来た怪物。所謂ゴーレムなのだろうか。

 「お前、ダハヤシが死んだと言ったか!?」

 トサマがゴーレムにそう叫ぶと、そいつは嘲笑うかのように言い返した。

 「そうだ。そう言ったよ!」

 トサマは自分の父親の仇が取れないという事を知り、怒りに燃えていた。それはまさに、周りの空気が少し歪むほど。

 「この…ゴーレム野郎がぁぁ!」

 トサマが高く跳び、ゴーレムにかかと落としをする。

 「何だぁ?」

 「なっ!」

 しかし、ゴーレムはトサマの足首を掴み、こちらに投げ飛ばす。

 「人間弾丸だぁ!」

 「ぎゃぁぁ!」

 「くっ、『魔法変化、手』!」

 トロイトがそう言うと、杖の先から大きな手が出てきた。

 そして、それはトサマを受けた。

 「うおっ!」

 「これはクッション性が高い手だ。安心してくれ」

 「ぐ、すまない。俺の感情が昂ったせいで…」

 「いや、いいんだ。僕達は仲間だからな」

 トサマがこっちに戻り、俺達は構えを取る。

 「そうだ、まだ名を言ってなかったな」

 ゴーレムが名乗る。

 「俺の名はゴーレム・マルティオス!又の名を『岩の魔神』だぁ!」

 「マルティオスねぇ…」

 俺は奴の叫びからある男を思い出していた。

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