怪物村

 旅を始めて数時間経った。

 「腹が減ってきたな」

 「えぇ。同じく」

 俺、モーガン・ヨシネムと魔法使いトロイト・シウバは腹をすかして草原を歩いていた。

 途中途中でモンスターを倒し、ゴールド(この世界の通貨)や防具の素材は貰っているものの、食べ物は一切貰っていない。(というか、何故モンスターを倒したら素材はまだしも金を貰えるのだろうか)

 「あぁ…トロイト、食料はあるのか?」

 「一応、持ってきてますが…」

 トロイトが懐からバーらしき物を出した。

 「これは?」

 「エネルギーバーです。これはフルーツ味のバーです」

 「そうか」

 俺はそれを食べる。

 (パサパサする…)

 現実世界のヤツと同じように、口の中の水分が持ってかれる。

 「でも、エネルギーは回復した気がするな」

 「それは良かった」

 空を見上げると、いつの間にかオレンジ色となっていた。

 「夕方か」

 「どうします?どこかで野宿しますか?」

 「いや、それは止めておいた方がいい」

 「え?」

 俺は外での野宿に嫌な思い出がある。

 転生前、俺はとある議員を殺すために奴の家付近にある橋の下でホームレスの振りをしていた。しかし、その議員が嗅ぎ付けたのか、俺の元に何故かヒットマンが送られていた。

 何とかそのヒットマンは倒し、その後議員を暗殺したからいいものの、野宿は俺のトラウマとなっている。

 「外で寝ていたら、寝首をかかれる可能性がある。だから止めておいた方がいいんだ」

 「そうですか…為になりました」

 そういう会話を続けていると、向こうから一人の老人が歩いてきた。

 「人だ!」

 「散歩ですかね?ここら一帯はモンスターが出る可能性があるのに」

 俺達はその老人に近付く。

 「あの、おじいさん」

 「なんじゃ?」

 「もし良かったら村まで連れてってくれませんか?」

 「村か…今から帰る所じゃったからちょうどええわい。いいぞ、着いてこい」

 「ありがとうございます!」

 なんという僥倖。俺達はその老人に着いていき、村にたどり着いた。

 「ここが、カシーノ村じゃ」

 「本当にありがとうございます。この村に泊まれる所は…」

 「あぁ。あるぞい」

 そして、宿に着いた。

 「この宿はワシの紹介であれば無料で泊まれるのじゃ」

 「恩に着ます」

 宿に入り、俺達は寝床に就く。

 「じゃあ、また明日も頑張るか」

 「そうですね」

 俺は瞼を閉じ、寝た。




 「ククク…いい獲物が取れたわい」

 「そうですな」

 「なんだ…」

 俺は老人二人の声が聞こえ、目が覚めた。そして、ドアが開けられた。

 「さて、死んでもら…起きていたのか!」

 「ちっ!」

 俺は急いでトロイトを起こす。

 「起きろ!コイツら俺達を殺そうと!」

 「な、何だよ…」

 「ぐぅぅぅ…」

 「グルルルル」

 二人は狼が人になったかのようなフォルムに化けた。

 「なっ、コイツらはウルフマンか!」

 「たくっ、やるしかねぇか」

 俺は短剣を出そうとする。しかし、俺はとある事を思い出した。

 (そういえば、宿に入るときに武器を取り上げられたんだ!)

 そう、武器は無かった。それはトロイトも同様で、杖が無かった。

 「くっ、素手かよ」

 俺はファイティングポーズを取る。

 「ぐわぁぁっ!」

 一体のウルフマンがこっちに突撃する。

 「くっ!」

 「ぐぎゃぁぁ!」

 ウルフマンは俺を突き倒したのだ。

 「ぐがぁぁぁ!」

 ウルフマンが俺の首に噛みつこうとする。

 「止めろっ!この!」

 「おらぁぁぁ!」

 トロイトがウルフマンにタックル。それにより、俺からウルフマンが剥がされた。

 「すまない、トロイト」

 俺はウルフマンの鳩尾に蹴りをいれる。

 「おらぁ!」

 「ぐばがぁぁ!」

 ウルフマンは悶え苦しみ、そのまま消え、ゴールドと毛皮を置いていった。

 (全く、どうなってんだよこの世界)

 そう考えていると、もう一体のウルフマンが爪を突き刺そうとする。

 「ぐるしゃぁぁ!」

 「させるかよ!」

 俺はスライディングで奴を転ばせる。

 「ぐぎゃっ!」

 ウルフマンの手が床に突き刺さる。そしてそれを抜こうとする。

 「ぐっ、ふっ!」

 「トドメだ」

 俺は奴の背中に蹴りを入れ、背骨を折った。

 「ぐぶがぁぁぁ!」

 そしてソイツも毛皮とゴールドを置いていって消えた。

 「今のうちに逃げるぞ!」

 「あぁ!」

 俺は宿に置いてあった武器を回収し、宿を後にする。

 そして村を出ようとした瞬間、後ろから声をかけられた。

 「おい」

 「なっ!」

 そこには、俺達を案内した老人がいた。

 「ここから出られると思うなよ!」

 そしてソイツは巨大な狼の体をしたモンスターに化けた。

 「グゲゲケ、俺はウルフキング!貴様らを喰ってやらぁ!」

 そして、ウルフキングの後ろには何体ものウルフマンが集まっていた。

 「グルルルル」

 「ちっ、無傷では逃げられなさそうだな」

 俺は短剣を構える。

 「殺れぇ!」

 「グォォォォ!」

 「うしゃぁぁぁ!」

 何体ものウルフマン達が俺に襲いかかる。

 「はっ、せいやぁ!」

 「ファイヤアタック!」

 「ぐべぇぇ!」

 「ぐぎゃぁぁ!」

 俺は奴らを切り倒し、トロイトは呪文で蹂躙する。

 そして、ウルフキングの部下は全員消えていった。

 「ちっ、まぁいい!貴様を喰らうまでよ!」

 そう言うと、ウルフキングが口を開け、襲いかかる。

 「そこだ」

 俺は奴の眉間に短剣を突き刺す。

 「ぐぼあっ!」

 そこが弱点だったのか、奴は倒れ、消えていった。

 「全く、大変だった」

 「そうですね。今日はもう遅いですし、寝ましょう」

 「あぁ。そうしよう」

 俺達は誰もいなくなった村の宿で寝ることにした。

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