第6話 イノセンス

 私にとってのベストを挙げるとしたら、『ナウシカ』『火垂るの墓』そして、この『イノセンス』となる。ところで、最初、アニメ映画との限定をつけようかと想ったが、そんな必要が無いほど、日本のアニメのレベルは高い。といって、私自身、生粋のアニメファンといいえるほどには見ていない。『エヴァ』や『進撃』は見たとはいえ、そんなもの基本教養であろう。最近のものであえていえば、『シャドーハウス』くらいであろうか。


 ところで、『ナウシカ』の魅力、今更、語る必要もあるまいが、あえて野暮をなすとしようか。終盤間近のナウシカの死と再生をめぐるクライマックスは、観衆を究極のカタルシスに引きずり込む。これは、まったくの私見であるが、宮崎監督が『トトロ』を撮ったのは、自作『ナウシカ』を否定するためだと想っている。厳密にいえば、「『ナウシカ』に対するあまりにもの諸手を挙げての歓迎」を否定するため、ということだが。


 『火垂るの墓』についていえば、これほど泣ける映画を私は知らない。


 『イノセンス』は趣が異なる。何も、それは上記2作がいずれもジブリだからという訳ではない。


(大友克洋の『アキラ』はどうなんだ?との声が聞こえそうだが、やはり、そこは『童夢』を含めマンガの歴史の中で語るべきと想う。もちろん、映画『アキラ』が『イノセンス』やジブリ映画とともに奇跡的な日本アニメの僥倖と至福の時代(シーン)を現出したことは疑いえないことであるが)


 『イノセンス』の肝となるのは、その世界観である。それを好むか好まざるかが、この作品に対する評価を決定づけると言って良い。私にとっては、はまりすぎるほどはまる世界観も、他の人にとっては、どうであろうか。まさにその人次第となろう。実際のところ、この世界観――美学と言った方が良いかもしれない――は理屈ではない。まさに、好みの問題、いわゆる『蓼食う虫は好き好き』である。


 第1話で挙げた『アモーレス・ペロス』に加えこの『イノセンス』、何となく、私の好みも分かってもらえよう。最近、『イノセンス』が再放送されたので、それを録画して繰り返し見ていた。いくら好きとはいえ、飽きないという訳でもなく、また『アモーレス・ペロス』の第1幕に戻って、それを繰り返し見ているところである。いい加減、第2幕に進めとの声が聞こえそうだが、他人が造ったものが自分の好みに合う僥倖と至福はそう簡単に手放す訳には行かないのである。


 

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