第21話 合流

西のドワーフたちを連れての帰り道は何も問題なくドワーフの里までたどり着いた。


「清美嬢、同属を救ってくれて感謝する。それにしても西のドワーフの長が変わっていたとは知らなかった。それにあいつは出来の悪い息子を持ったと言っていたがそいつが長となっていたとはな」


西から来たドワーフ11人は皆顔を背けている。ここでマークさんがドワーフの里の長へ話しかける。


「俺だって、長を継ぎたくはなかったさ。でも、誰も立候補しないどころか先代から教育を受けている俺が継ぐべきだって声が多かったんだ。いざ長になってみれば責任ばかりの失敗ばかりで相手にもされなくなっちまったけれど・・・」


私はマークさんがボコボコになるまで殴られている場面を見ているのだが、それはひどいと思わずにはいられなかった。


「それは辛かったな。ここでは私が長として皆を治めるから心配するな。ワシの子供もまだまだ長になるには心もとないが手助けくらいはしてくれるだろう。まあワシも清美嬢にお世話になりっぱなしだがな。ワッハッハ」


今まで、食糧難に困っていた西のドワーフたちはなんともいたたまれない表情をしていた。


「さて、清美嬢。約束通り砦の建設に手を貸そう。しかし、今日はもう日が暮れる。明日、もう一つのダンジョンへ案内してくれるか?」


「もちろんです。では明日の朝に迎えに来ますね」


そういって私はドワーフの里を後にした。


ダンジョンの外に出ると、なにやら視線を感じた。周りを見渡してみると小学生くらいの子供が4人こちらというよりダンジョンを見ているようだ。私と目が合ったことが分かると急いで逃げていった。


なんとなく嫌な予感を感じた私は、町役場まで行った。


「というわけで、ダンジョンの近くに小学生くらいの子供が4人、ダンジョンのジーっと見つめていたんですよ。私が入ってみている感じでは危険は少ないですけれど、念のため注意しておいてください。あと、砦を作るための交渉がうまくいきました。明日から取り掛かろうと思いますのでもう一つのダンジョンにはくれぐれも人が近づかないように注意をよろしくお願いします」


「2点とも分かりました。清美さんに全て任せてしまって申し訳ありません。そんな中お願いするのも心苦しいのですが、大きな寸胴鍋をどうにか調達できませんか?配給で食事をまかなうのに適した調理器具が足りていない状態なんです。ガスの残量も気になるところですし。こちらでも何か考えてはいますがなかなかいい案が出ない状態でして」


「分かりました。ドワーフに相談してみますがガスはどうにもならないと思います。もしかしたら薪の準備をした方がいいかもしれませんね」


町役場の方は明らかに頬をひきつらせていた。異世界に行ったわけではないのに文化レベルが下がることへの抵抗だろう。私の想像ではあるが。


伝えることはもうないので、私は炊事場で食事をもらって家に帰った。

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