ガラガラノドカラ

◇USBに残されたデータ◇



 息をするたびに掠れる喉を押さえて、

 何でもない振りをして誤魔化した。


 じわじわと、喉を虫が這って歩くような

 削られる痛みに、何もないような呆けた顔で隠した。


 きっと何を言っても伝わることはないだろう

 この先どんな事態になっても、今この瞬間に何を言っても変わらない。


 なら、今自分は何もない振りをして何時も通りの今日を楽しめばいい。

 いずれ結果が出て、声が出なくなっても、すっかり直っても

 結局は今日この日の行動は何の意味も成さないのだから。


 頭がくらくら、身体がふらふら、目はらんらん、

 いつもどおりの無表情でやり過ごす。

 少し熱っぽい気がしても、きっと今日は暑いのだと誤魔化して、

 またふらくららんらん。


 咳がでて、響いてしまっても

 聞かれるまでは何でもないまねを

 聞かれたとしても「風邪かな?」聞いている振りで聞き流して。


 嗚呼、繰り返すよ。

 気持ち悪くても、息がし難くとも、

 死ななきゃたおれなきゃ問題はない。


 心がずたずたでも見えなければ何にもないんだ。

 なら何も言わないよ。

 言っても無駄だから、痛い痛い、聞こえないなら居ない居ない。


 五月蝿い音も何もかも、いらないいらない。

 気持ち悪い。


 嗚呼、全く何もかも知らないいらない、

 何にもなくても変わらないなら決められたテンプレーション。

 自分は繰り返すよ。


 見えないでしょう。

 聞こえないでしょう?

 初めに目を塞いで耳を塞いだのは貴方だったのに。


 今は私が目を瞑って口を塞いでいる。

 気味悪い君悪い。

 自分が悪いの?きみわるい?


 今じゃ目を瞑っても景色が見えるから、

 今じゃ、身体が何かを話し出すから。


 自分に意識はない振り、いらない振り

 いつの間にか振りじゃない。


 ボクが居れば君は眠って

 俺がいれば皆黙る。


 誰も気づかないいらない子。

 気づかないなら居るいないいらないは自分が決めよう。

 自分が居るならいるでいいや、


 繰り返すよ。

 何度でも、喉が痛い居たい。

 居たいのなら、避けんでもいいや。


 痛い居た、叫べば皆が振り向いて。

 とっても怯えた顔で笑う。


 嗚呼、いたいイタイ。




 のどがいたい。




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