第16話 内政パート


 俺は商業国家テスマンを征服した。

 さて、ここからはテスマンの内政を改革していこう。

 俺が新しい領主となったからには、テスマンの連中には今まで通りと思ってもらっては困る。

 なにせ、俺は悪逆非道の魔王様なのだからな。

 テスマンの連中を震え上がらせ、反逆できないほどに苦しめてやろう。


「よし、まずは税金だ……!」


 今までのフリンク村などでは、領地の規模が小さかったから、税制度などはなかった。

 フリンク村では一斉に鉱山で働かせるなどで対処してきた。

 だがテスマンは小さいとはいえ、立派な国だ。

 国規模で一斉に仕事を斡旋したりはちょっとできない。

 この国だと、みんなもともとの仕事や経済があるしな。

 今回は今までのとは違って、ちゃんとした内政が必要になってくる。


 そこで、税金だ。

 国のみんなから税金を集めて、それで国家を運営していこう。

 以前の税制がどうかは知らないが、ここは俺流でいかせてもらおう。

 魔王領の税金は、収入の1割だったからな。

 だからといってここも1割だと、舐められてしまう。

 よし。


「くっくっく、今日からこの国の税金は収入の3割だ……!」


 さすがに3割はとりすぎかとも思うが、このくらいはな。

 俺が城の上からそう国民に宣言すると、国民たちはシーンとなった。

 うん……?さすがにやりすぎだったか……。


「ま、まあそうだな……。よし、子供のいる世帯は2割に減税だ……! これでどうだ……!」


 俺がそういうと、こんどはまばらながら拍手が起こった。

 よし、これでいいだろう。人口は国にとって大事な指標だからな。

 少子化対策のためにも、子供のいる世帯に負担をかけるのはよくないからな。


 さて、俺の改革はまだまだこれからだ。

 この国は、商業によって栄えている国だときく。

 城の外観や、街のようすをみても、さぞ儲かっているのだろう。

 カジノなんかもあるし、おそらく国民も富裕層が多いはずだ。

 だから、俺は考えた。


 テスマンの国民を、魔王領に観光客として呼びこんで、お金を落としてもらおう!

 そうすればテスマンの国民はハッピーになるし、魔王領の経済は活性化。

 いいことずくめだ。

 我ながら天才的なアイデアだ……!

 俺はこの作戦を、「GO TO 魔界」と名付けて、大々的にキャンペーンをうつことにした。

 魔王領への旅費の15パーセントをクーポンを発行して、免除するというものだ。

 これで、魔王領へみんな旅行にきてくれればいいんだがな……。


「よし、明日から『GO TO 魔界』キャンペーンを開始するぞ! 旅費の15パーセントはクーポンで!」


 俺が国民にそういうと、国民たちは頭にはてなを浮かべていた。

 国民の一人から、質問が出る。


「あの……国から出るのにお金はいらないのでしょうか……?」

「は……? もちろんだが……?」

「そ、そうですか……。ありがとうございます」


 おかしなことをきくやつもいたもんだ。

 なんで自分の国から出るのにお金がいるんだよ。

 しかもお礼まで言われたし……。

 どうやらこの国の人たちも、戦争で負けてどうかしてしまったらしい。

 かわいそうに……。


「あ、あの……では、他の領地への移住はどうなるのでしょうか……? 旅先の土地が気に入ったら、そこに移住しても構わないですか……?」


 国民の一人が、そんなことをきいてくる。


「あーうん、まあもちろん、魔王領の中なら好きに移住してもらってもいいけど。まあ、あまりにも人材の流出が多すぎると困るが……」

「そうですか……! ありがとうございます」


 どうやらこの国があまり気に入っていないやつもいるようだ。

 だが、移住くらいでいちいち聞いてくるなんて、おかしな連中だ。

 そんなもの、住むところくらい好きにすればいいのに……。

 もしかしたら、真面目な国民性なのかな。

 まあ、商人の国だっていうし、きっと真面目な人が多いのだろう。

 

 それから、俺は街の市場を探索してみた。

 すると、やけに物価が高いことに気が付いた。


「ん……? なんでこれがこんな値段するんだ……?」

「これは、消費税が含まれていますので、この値段です……」

「いやいや、そんなの高すぎるだろう……」


 どうやらこの国は消費税が高すぎるらしい。

 だけど、収入から3割も税金をとっているからなぁ。

 消費税まで高くする必要はないだろう。

 ということで、俺はこの国の消費税を5パーセントまで下げる法律を出した。


「よし、今日から消費税は5パーセントだ……!」

「おお……! それはありがたいです……!」


 国民たちも、これには素直に喜んでくれた。

 てかなんでそもそもこの国の消費税そんなに高かったんだ……?

 あ、もしかしてあれかな。

 カジノの運営とかにあててたのかな。

 カジノの運営、金かかりそうだもんな……。


 あと、この国は異様に学費が高かった。

 俺は国の資料などをみて、度肝を抜かれた。


「なんだこりゃ……!? この国の学費は、高すぎる……!」


 ということで、学費は免除にして、国で払うことにした。

 幸い、国庫には大量の金があったからな。

 それに、税金も十分にもらっている。

 まったく、デルモンはこんなに金をためてなにに使うつもりだったんだ……?


 学費を免除したのにはもちろん理由がある。

 やはり国の将来を考えると、教育は重要だ。

 それに、国を乗っ取るにはまずは教育からというだろう。

 各学校に国から多額の協力金を出す。

 そして、学校で魔王軍のすばらしさを子供のうちから教育するのだ。

 これで将来的に従順な国民を作るという寸法だ。


 それから、この国の統治はサキュバスのアリナに任せることにした。

 アリナは催淫と催眠が得意なサキュバスのリーダーだ。

 彼女に任せておけば、反乱の心配も薄い。

 国民全体に薄っすら催眠をかけることで、みなの反逆の意思をあらかじめ封じておくのだ!

 

 さて、これで内政はいいだろう。

 テスマンも落ち着いたことだし、俺はまた新しい領地を征服しにいくかな。

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