第14話 商業国家テスマン


 『ファンタジック・コンクエスト』の世界では、領地を一つ征服するたびに、コンクエストポイントというものが手に入る。

 コンクエストポイントは、征服した領地の大きさや、攻略難易度によっても変化する。

 フリンク村を征服したことで、500ポイント。

 イクィシェントを征服したことで、2000ポイントが手に入っていた。

 さっそく、これらのポイントを使用してみようというのが今回だ。


 コンクエストポイントの使い道は、自分自身の強化や、仲間の強化に使用できる。

 俺はまだまだ魔王としての力が弱い。

 まあせいぜい回復魔法が得意なくらいだ。

 なので、コンクエストポイントを自分の強化に使おうと思う。

 これで強力な魔法を覚えれば、これからの征服がさらに楽になるからな。


 フリンク村やイクィシェントは、まだまだ小さめの、攻略しやすい土地だ。

 だが今後、もっと強力な領地を征服していこうと思えば、さらに戦力が必要となる。

 俺はコンクエストポイントを使って、闇属性の攻撃魔法を覚えることにした。

 2000ポイントを使い、闇属性の中級魔法――デスマダクを覚える。

 そして残りの500ポイントは雷属性の下級魔法――サンダラを覚えるのに使った。


 今回攻め入るのは、街ではなく、国レベルの相手だ。

 とはいっても、小国だから、まあそこそこの相手って感じだ。

 大商人デルモンが治めているテスマンという小国だ。

 相手は金にものを言わせて、大規模な軍隊を持っているという。


 なぜ今回、この国を攻めることにしたのか、それはやつらの持っている金が目当てだ。

 テスマンを制圧すれば、大量の金貨が手に入る。

 イクィシェントを制圧し、大量の労働力を手に入れたら、次はやはり金だろう。

 こうやって攻め入る順番に工夫をすることで、世界征服への道につながるのだ。

 正攻法でやっていては、世界征服が完了するのがいつになるかわからんからな。

 一刻もはやく、俺は世界征服をしてしまわねばならない。


 今回は、俺もそれなりの軍隊を用意する。

 そう、イクィシェントのときに手に入れた、戦闘奴隷たちを投入するのだ。

 人間のほうが、魔族より、俺の回復魔法で治しやすい。

 人間はまさに安い戦闘機のようなものだった。

 戦闘奴隷たちを束ねるのは、デュラハンのギルドだ。

 ギルドがイクィシェントを離れているあいだ、代わりに部下のコボルトがイクィシェントを管理する。

 

 それから、強力な味方がまだいる。

 サキュバスのアリナ率いる、サキュバス部隊だ。

 サキュバス部隊の催淫攻撃で相手を攪乱し、ギルドの部隊で敵を蹂躙する作戦だ。

 そしてトドメの必殺技は、俺が先ほど覚えた闇魔法デスマダク。

 これだけの戦力があれば、まあテスマンを落とすのには十分だろう。


 ということで、俺は軍を率い、テスマンまでやってきた。


「いけぇ……! 全軍、進撃……!」


 相手は大量の傭兵軍団だ。

 大商人デルモンによって雇われた猛者たちが、襲い掛かってくる。

 だがしかし、どんな強敵も、サキュバス軍団には敵わない。

 特に相手はデルモンの金によって雇われているだけの連中だ。

 テスマンの正規軍はそれほど多くはない。

 

 金によって雇われているだけの連中には、信念がない。

 サキュバスの催淫は、相手の心の強さによってかかりやすさがかわる。

 相手が国ために戦う、信念のあるやつらなら話は別だが、しょせんは金で雇われた連中。

 そんなやつらがサキュバスの催淫に、耐えられるわけがなかった!

 サキュバスが戦場に催淫を放つと、すぐにその効果があらわれた。

 傭兵たちは、前かがみになって、歩きにくそうにしている。


「くそ……! なんだってこんなときに……!」


 傭兵たちが履いているズボンは、金属の入った、かなり硬いものだ。

 それ故、別の堅いものがズボンの中にあると、非常に歩きにくくなる。

 傭兵たちはみな一様に股間を固くし、うずくまってしまった。

 そこをすかさず、奴隷部隊が蹂躙する。

 デュラハンのギルドが、一斉に命令を下す。


「いけぇ……! 相手は信念を持たぬ愚鈍な傭兵どもだ! お前たちの力、見せつけてやれぇ!」

「うおおおおおおおおお!!!!」


 戦況はあっというまに傾いた。

 傭兵たちが使い物にならないので、正規軍も及び腰だ。

 数少ない正規軍をやっつけると、あっというまに道はひらけた。

 そのまま城内に侵入し、大商人デルモンの首を獲る。

 今回、見事に敵の大将首をとらえたのは、デュラハンのギルドだった。


「はっはっは……! 魔王様、ごらんになりましたでしょうか! 私のこの華麗な剣さばきを……!」

「ああ、すばらしい戦いだったぞ」


 デルモンを殺す前にいろいろと痛めつけたようだが、まあそれには目をつぶろう。

 どうにも魔王軍の連中は残虐行為が好きな連中が多いみたいだ。

 まあ、戦いの中での息抜きということで、よしとしよう。


 これにて、大商人による小国テスマンは陥落し、俺の征服下となった。

 城の倉庫からは大量の金貨が見つかって、がっぽがっぽだ。

 テスマンはもともとが商業都市で、そこから発展し小国となった歴史があるからな。

 なにかと使える施設などは多そうだ。



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