1ー終
─時はゲッコーボーイこと勇がREXの怪人スキンクマンを倒した日に遡る。
カメレオン・レディは夜の港で迎えを待っていた。部下達とともにマスター・トゥアタラ……カシムに戦いを挑んだ彼女だが、瞬く間に部下二人を殺され自身も瀕死に追い込まれた。だが、彼女はカメレオンの能力で姿を隠し、違う這うの体で逃げ延びた。あとはREXへレプティカルを届けた後の部下達と合流し、体勢を立て直すしかない。
程なくしてハマートラックが一台、彼女の前に停まり、二人の男が降車した。
「意外に早かったわね、ガロティア」
彼女は右腕でもある黒人男性、 カナヘビの半爬者・ガロティアへ駆け寄るが、彼ともう 一人の男・アーノルの顔色は優れなかった。
「レディ、輸送中のレプティカルを・・・何者かに奪われました!」
「そして、恐らく連中は警察の手の者です」
「何ですって……!?」
ガロティアとアーノルが曰く、輸送中の車に対しフロントガラスへ消化器のようなものが噴射され、やむを得ず停車した際、車内に催涙ガスを投げ込まれ身動きが取れなくなった……その隙にレプティカルを奪われたという。日本で暴徒鎮圧の装備を備えているのは警察くらいのものだ。だが、相手が警察ならばレプティカルを盗んだ犯人と繋がる者達の検挙が優先して行われるはずである。 被害品とはいえ相手の占有下にあるものを強奪するなど強盗と等しい行為だろう。
その時だった。けたたましいエキゾースト音とともに一台のオートバイが走行してくるではないか。 マスター・トゥアタラか?いや、違う。彼のバイクはカワサキKLXというオフロードバイクであり、今現れたのはヤマハVmaxという大型のアメリカンタイプだ。
「カメレオン・レディ及びその部下達よ、レプティカルの入手に失敗した様だな」
フルフェイスヘルメットを被ったままバイクから男が降車する。
「何だ貴様は!!」
ガロティアが
「
「く、クリーナー……本当にいたの!?」
秘密結社REXにおいて、組織の長である大那壮吉の命令により、失態を犯した者を処刑する者がおり、その者を掃除人と呼ぶ……カメレオンレディ達はそんな噂を聞いた事があった。
「ボスはお怒りだ。この失態、その命を以て償ってもらうぞ」
掃除人は手に力を込める。すると両手から鋭い爪が伸びた。やはり彼も爬虫類の力を持つ者なのだろう。
「一人で我々に勝つつもりか!」
黒服のアーノルは緑色のトカゲ人間へと変化した。アノールトカゲ科の持つ素早い動きで掃除人に近づく。 が、
「……アーノル!!」
叫ぶガロティアとカメレオンレディ。アーノルの頭部は掃除人の爪により切断されていた。
「レディ、二人同時に行きますよ!」
「ええ!」
それぞれ人型のカメレオンとカナヘビに変化したレディとガロティアは掃除人に襲いかかる。
「
掃除人は横に一回転する。いつの間にか彼の後ろ腰からは太く、長い尾が生えているではないか。そして、強靭な尾による一撃はレディとガロティアをいっぺんに弾き飛ばした。まずは壁に打ち付けられたガロティアの頸部に両腕の爪を突き刺した。
「ガロティアっ!!おのれ、よくもガロティアを!!」
レディが掃除人に背後から飛びかかる。すると掃除人は振り返った。ヘルメットは顎の部分が上にスライドするシステム式構造となっており、彼の顔が出する。鋭い歯が並び、先の割れた舌が除く。ワニでもなくヘビでもないその顔。
「
カメレオンレディはそう言い残し、首から鮮血を噴き出して倒れた。 掃除人に頸動脈を食い千切られたのだ。
「任務完了」
鱗化を解いた掃除人の顔は、十代と思われる少年のものだった。すると、少年のスマートフォンに電話が着信する。ヘルメットの側面にあるボタンを押すと内部スピーカーに電話の音声が流れる。
『
「ボス!ただいま終わりました!!」
『よろしい。それでこそ我が掃除人だ。すまないが、もう何人か始末してもらいたい奴らがいる。 一人はカメレオンレディがレプチゾルで生み出した“スキンクマン” という半爬者。そして残りの二人は“マスター・トゥアタラ"と奴が生み出した “ヤモリの半爬者だ』
「お任せください。ボスの命令とあらば」
『頼もしいな。期待しているぞ、竜童』
REXの首領である大那壮吉からの通話が切れると、掃除人─竜童はカメレオンレディ達の死体をハマーに押し込んだ。これらは車ごとREXの構成員が回収に来る算段である。
竜童の乗るVmaxは敦賀市へと走る。 次の標的を狙いに……
ゲッコーボーイ たかはた睦 @takahata62
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