第4話 平日の朝は憂鬱で、
留年宣告から一夜明け……
この夜一睡もできかった僕は、クマの濃い目で、暗い部屋に唯一光るパソコン画面を眺めていた。
年中締め切っているカーテンの隙間からは、もうずっと前から朝の明るさが差し込んでいる。
ボツボツと雨の音が聞こえる。
今日も梅雨前線は元気らしい、僕と違って。ジメジメさは似てるけど。
パソコンが表示しているのは、ネット知恵袋のサイトだ。
今開いている質問は、
『高校の授業の出席日数足りない時はどうすればいいですか?』
それに対してのベストアンサー。
『やってしまったことは取り戻せません! 来し方を反省し、土下座でお上(教師)に寛大な処置を願い出るしかないでしょ! それで正道に戻れるかはお天道様のみぞ知るですが! しかし、十代で負け組人生に決定ですか。ぷぷぷ』
こういう癖の強い人がやたらびっくりマークをつけたがるのは、どういう性質なんだろうねほんと。
もう少し冷静なものを求めてスクロールし、次の回答。
『学校が特別に対応してくれないのなら、諦めるしかないです。まあ、身から出た錆ですよね。これを機に自分の甘えた人生を振り返ってみては?』
「だぁー!」
僕は万年床に寝転がった。
おじさんたちのマウントにため息が出る。
これだからインターネットはクソだ。
匿名でマウントとるやつは、リアルでマウントが取れない鬱憤をここで晴らしているのだ。
まったくかわいそうな連中だ。
……まぁ、今の僕もそれと似たような立場になりそうなんだけど。
モニターを見続けてしょぼくれた目を擦ったとき、スマホがけたたましいアラームが鳴らした。
ロック画面には「学校行け」と書いてある。
昨日の僕からのメッセージだ。
止めても止めなくても、五分毎にアラームがギャン鳴きするように設定してあり、絶対に起こすという圧力を感じる。
はぁ……とこの世の終わりみたいなため息をつき、のっそりと電気をつけて、クローゼットへ向かった。
昨日久しぶりに着たブレザーに、再び袖を通す。
憂鬱だ……
心はこれから向かう魔窟へと飛ぶ。
登校、クラス、授業……
昨日ぶつかった同級生のことを、現実逃避のように思い出した。
国木田さんも出てくるのだろうか……
知りようもないし、来てたとしてもクラス違うし、どうということもないけれど。
気が乗らないまま玄関に出て、靴を履いていると、脇のドアから眠そうな母が目を擦りながら顔を出した。
目が完全に開いてない。夜勤の疲れが顔のあちこちに滲んでいる。
「直輝? 早いねぇ……」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「ううん。平気だけど」
と言って、母は息子の格好を見て驚いた。
「え、今日も学校行くの?」
「うん。まぁ……」
「すごいじゃん!」
休むと留年するからね、という絶望的な理由を、喜ぶ母の前で飲み込む。
ここまで育ててくれた一人親にそれを言うには、まだ覚悟も勇気も足りない。
「頑張ってねぇ。母さんも仕事頑張るから」
寝ぼけ眼で手を振る姿に見送られ、曖昧な笑みを返しながら、僕は玄関ドアを開けた。
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