第6話 ジュエルスライム

「(ふう、〖進化〗完了だな)」


 夕焼け空に体の一部を透かして見た。

 ラムネ瓶を思わせる清涼感ある青色が視界に映り込む。

 かつての灰色とはかけ離れた鮮やかさだ。


 なお体は多少大きくなったが、形は変わっていない。

 スライムなのでさもありなん。


 見た目の変化はこんなところか。

 はてさてどのくらい強くなったのか、〖ステータス〗を確認してみよう。


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種族:ジュエルスライム

獣位:雑獣ぞうじゅう

魂積値レベル:11


 スタッツ

ライフ :25/30

マナ  :10/10

パワー :6

タフネス:311

レジスト:35

スピード:6


 スキル

溶解液 自己再生 方向感覚

カバー 投擲 逃走

登攀 挑発 圧し潰し

ブロック 食い溜め(NEW) 完璧の守勢(NEW)

逃走本能(NEW) 魅惑の輝き(NEW)

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 〖タフネス〗がまたスゲー上がってんな……。〖進化〗前は250ちょいだったのに。

 おかげで高いはずの〖レジスト〗が大したことないように見えちまう。

 まあ、説明文を信じるならこれでもそれなりに高いんだろう。


 それより問題は〖パワー〗と〖スピード〗だ。

 何で〖進化〗の前と変わってねぇんだよ!


 いや、防御性能を重視してジュエルスライムを選んだのはオレだけどさ……。

 でもさすがに変動無しは予想外だ。

 〖パワー〗の重要度は低いって考えちゃいたけど、少しくらいは上がってくれても良かったんだぜ……?


「(……はぁ、〖スキル〗を確認すっか)」


 気を取り直して次の項目に意識を集中させた。

 それぞれの〖スキル〗の詳細が頭の中に浮かんでくる。



~スキル詳細~~~~~~~~~~~~~~

食い溜め 蓄えられる栄養の量を増加させる。


完璧の守勢 常時、基本の〖タフネス〗に応じて〖レジスト〗を補正し、基本の〖レジスト〗に応じて〖タフネス〗を補正する。


逃走本能 〖逃走系スキル〗を覚えやすくなる。常時、〖逃走系スキル〗の効果を補正する。


魅惑の輝き 〖スキル〗所持者を視認中の生物を対象とし、〖スキル〗所持者への攻撃意思を引き出せる。〖スキル〗所持者が殺害された時、殺害者が収奪できる〖魂片経験値〗を大幅に増加させる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 まず、〖食い溜め〗はさっきウルフ食ってた時に得た〖スキル〗だろうな。

 そこまで強力って訳じゃねぇが、何日も食べ物が見つからないって時とかにはありがたさを実感するだろう。


 〖完璧の守勢〗は純粋な強化能力だ。

 上昇値が具体的にどのくらいかは分からねぇが、オレの有り余る〖タフネス〗を参照して強化するのなら、〖レジスト〗もかなり上がるはずだ。


 〖逃走本能〗も良〖スキル〗だろう。

 〖逃走〗が強くなるならオレの低い〖スピード〗を補える。


 だがしかし最後の〖魅惑の輝き〗。

 こいつだけは問題だ。

 何度見直しても相手の得る〖経験値〗を増やすと書かれているように見える。


「(えぇ……そんな馬鹿みてぇな〖スキル〗があんのか……?)」


 〖スキル〗は自身を強くしてくれる力だ、ってのがスライム間での共通認識だった。

 が、相手の取得〖経験値〗を増やすなど何の役にも立たない。

 これじゃあただのボーナスモンスターだ。


「(え、もしかしてそうなのか……? 防御力もやけに高いし、もしかしてオレってメタルなアイツみてぇなボーナス枠なのか……?)」


 気の滅入る予想が浮かんで来たが努めて無視する。

 〖魅惑の輝き〗の寸評に戻ろう。


 この〖スキル〗、前半の誘引効果は場合によっちゃ使えるかもだが、これも〖挑発〗があるからそこまで使わなさそうなんだよなぁ……。

 ま、オンオフが切り替えられて無差別誘引にならないだけマシって考えよう。


「(ハぁ、こんなとこか)」


 一通り確認し終えた。

 約一個問題児があったが、まあ、防御面がかなり充実、特に状態異常対策が以前までと比べ物にならないくらい補強されたので良しとしよう。


「(何か気疲れしたな、早く寝ちまおう)」


 スライムとて睡眠は必要である。

 木の根の隙間の寝床にて、オレはゆっくりと眠りに落ちて行った。




「(朝だー!)」


 翌朝、日の出と共に目覚めたオレは元気よく寝床を飛び出した。

 ドスンと着地し、遅れて今日の予定を考え始める。


「(結局、オレはどう生きるべきなんだろうな……?)」


 すなわち、狩猟を中心にするか、採取を中心にするかだ。

 昨日の方法を使えば狩猟は可能だし、採取だってオレの〖タフネス〗や〖スキル〗があれば難しくはねぇ。

 〖レベル〗を上げられる狩猟の方がメリットは大きいが、オレの〖タフネス〗を破れる魔獣に出くわす恐れもある。


 ……だけどそれは採取にしても同じか。

 アクティブに戦いを挑まなければ遭遇率は下がるだろうが、もし遭遇したときに〖レベル〗が低いせいで抵抗できなかった、て事も起こるかもしれねぇ。


 どっちのリスクを取るべきか。

 少しの間考え込み、突如、思考は極大の悪寒によって遮られた。


「(!!)」


 反射的に〖ブロック〗を発動。

 直後、オレの体は宙を舞っていた。



~非通知情報記録域~~~~~~~~~~~

・・・

>>侵されし硝土の焔鬼、ラメルガが〖縄張り〗を発動しました。

>>〖制圏:焦土-混沌〗が森とざす者、ドワゾフの〖制圏:樹海〗と接触しました。

>>界鬩かいげき現象が発生しました。

>>〖制圏:焦土-混沌〗が支配権を一部、強奪しました。

>>環境特性が変動しました。

・・・

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