第15話 やっぱり大判焼きはつぶあんだ!



三河さんは驚いたのと同時に、ベンチから立って立ち去ろうとした。


「ちょっと待って三河さん」

「私、帰らないといけないので」

「ここには、誰もいないから!」


俺は咄嗟とっさに三河さんの腕をつかみ引き止めていた。


引き止めるとあっさり三河さんはそのまままたベンチに座り直した。

言葉の真意を理解してくれたのだろうか…。


「隣座っていい?」

「はい…」


俺は三河さんの隣にちょっと距離を離して座った。



「いきなり質問で悪いんだけどなんでここにいたの?」

「特に、理由は…ないです…」

「そうなのかな、本当はなんか理由あったんじゃない?」

「…」


三河さんは俯いて黙ったままだった。

やっぱり、佐々木に言われたことが気になっているのだろうか…。


「三河さんごめん、俺昼休みに佐々木との会話聞いちゃったんだ」

「やっぱり聞いてたんですか」

「聞いてたのわかったの?」

「いや、ここには誰もいないからって言葉で勘付きました」


やっぱり三河さんは言葉の真理理解していたのか。


「やっぱ三河さん勘付いてたか笑」

「私、佐々木さんに言われた事守ろうとしたんです。だから、放課後教室で勉強したかったんですけど立川さんが起きたら話してしまうと思って…。でも家に帰るまで特に行く場所もなかったのでお気に入りのこの場所に座ってました」

「そういう理由だったんだね…。やっぱ俺のこと無視したのも佐々木に言われたから?」

「はい」


やっぱり、古典の時といい避けられていたのは佐々木の言葉のせいだったのか。


「そんな佐々木の言うことなんて無視しなよ」

「え?」


また、三河さんは驚いていた。


「だから、無視しろって言ってんの」

「でも、立川さん佐々木さんのことを好きなんじゃ…。噂にもなってますし。だから迷惑かけないように…」


そういやこの時代の俺は佐々木のこと好きだから、タイムリープして人格が変わるまでのことも引き継がれてるんだな。めんどくせーな。

10年前の俺は何やってんだが…。

自分でもあきれる…。


「んなこと、誰が言ってんの?んなわけじゃなん」

「え、本当ですか?」

「本当だよ。本人が言ってんだから本当に決まってんじゃん。俺は佐々木のことは好きじゃないよ」

「そうなんですね、安心しました」


三河さんは、ぶっきらぼうだったが笑顔になっていた。

俺はその笑顔に何故か釘付くぎづけになっていた。


「あ、そういえばこの前ここで大判焼き食べたね笑」

「そうでしたね笑」

「また、買ってこようか笑お腹減ったし」

「また、夕食が食べれなくなっちゃいます笑」


俺は、なかば強引に大判焼きつぶあん、こしあん2つ買い三河さんに渡した。


「はい、こしあん」

「ありがとうございます。じゃあお金を…」

「いや、大丈夫」

「そんなわけにはいきません」

「じゃあまた明日勉強教えてよ。そのお金ってことで」

「分かりました。でも自分でも勉強してくださいよ」

「はーい」


相変わらず三河さんは真面目な人だった。


「冷めないうちに食べようか」

「はい」

「やっぱり三河さんはこしあんなんだね笑」

「そう言う、立川さんもつぶあんじゃないですか」

「まあ、そうだけど。つぶつぶがなきゃ物足りないじゃん!」


俺は、つぶあんの良さを熱弁した。

正直、俺のつぶあん好きには引かれていただろう。


「そんなに、つぶあんが好きなんですね。やっぱり立川さんなんかおじさんっぽいです笑」

「お、おじさん…。まあいいや。でもやっぱり大判焼きは美味しいね」

「はい、美味しいです」

「て言うか、つぶあんについて熱弁してたらもうこんな時間じゃん。早く食べて帰ろうか」

「はい」


大判焼きを急いで食べ、駅への道を歩き始めた。

歩いてる途中は、三河さんは終始無言だった。


「じゃあ、俺電車だからじゃあね」

「あの、立川さん待ってください」


駅に入ろうとした瞬間三河さんに止めらた。


「ん、どうしたの?」

「今日は、ありがとうございました。私頑張ろうと思いました」

「よかった。じゃあまた明日学校でね」

「はい」


俺は、三河さんと別れた後電車に乗り帰路についた。

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