第5話 この盗聴魔め!

「わりー、まだちょっと体調悪いから俺、保健室行くわ。飯は後藤と食っててくれ」

「ああ、そうかマジで無理すんなよ」

「おう」


廊下は食堂に行く人でごった返していた。俺はその人混みをかき分けながら急いで屋上に向かった。

急いで階段を駆け上がり久しぶりの階段ダッシュと寝不足の疲れで息切れがした。


ガチャ。


屋上に着くと神様が待っていた。


「はぁはぁ…お前、いきなり屋上に呼び出してどうしたんだよ」

「おう、来たか。ちょっと色々話そうと思ってな」

「何話すってんだよ」

「話す前に、ここからの眺めって綺麗なんだな」


神様のその一言で、ふと屋上からの景色をまじまじと見たら、壊れていない綺麗な街はそこにはあった。


「お前、何涙ぐんでるんだよ」

「いやちょっとな、そんことより話ってなんだよ」


俺は、屋上のちょっとした段差に腰を落ち着けて神様に問う。


「お前、三河葵に接触できていたな」

「ああ、三河さんが助けてくれたからそのお礼でチャンスだと思ってな」

「どうだった?」


神様が食い気味に聞いてくる。


「どうって、あいつはめちゃくちゃ真面目なやつだよ。高校時代こんなだったなって思い出したよ」

「そうか…。と言うか今も高校時代だろ。おっさん」

「うるせーお前に無理やり戻される前の高校時代だわ」

「ほかは、なんか気づいたことは?」

「んーあとずっと勉強してるなーって感じかな。さすが大臣のご息女って感じだったな」

「それだけか…」

「いや、あともう1つある」

「何だ!?」

「可愛い見た目なのに意外と淡白」

「どうでもいいことを言うな」


神様が俺の返答を聞き肩を落としがっかりしている様子だった。


「ま、まあ俺も仲良くなれるように努めるからさ、それで世界が救われるなら」

「ああ頼んだ…」

「まあ、そう肩肘張るなよ神様。あと昼休み15分くらいだし俺今からパンでも買ってくっけどなんかいる?」

「じゃあ、あんぱんで」

「意外とかわいいもん食うんだな」

「うるさい」

「さーせん」


俺は小走りで階段を降り、食堂の購買へと向かった。

購買に着くと、売れ残りのあんぱんとクロワッサンがあったので2つ買って、また屋上へと戻った。


「ほい」


待ちくたびれてる神様へあんぱんを渡す。


「サンキュー。はいお金」

「おう」


二人無言でパンを食べていると、神様から話しかけてきた。


「この調子で頼むな、英単語長初級の因数分解も解けない立川さん」

「お、お前話聞いてやがったのか!」

「そりゃ、神様だからな」

「てめえ、この盗聴魔」

「人聞き悪いな。観察だ」

「もういいわ、勝手にしろ」


と言って屋上から出て行こうとした瞬間神様から意味深なことを言われた。


「仲良く…してやれよ」

「はあ?じゃあな」


俺は勢いよく扉を閉め教室へと帰った。

(仲良くしてやれ?よく言うわ…)


キーンコーンカーンコーン


午後からの授業が始まった。

科目は現代文。暇な授業だ。

横の席を見ると、熱心に授業を受けている三河さんがいた。


(熱心だなぁ)

俺はそう他人事みたいに思いながら授業を受けた。


■■■


「ユウキ起きろ!」

「んん…沢田?」

「お前、もう放課後だぞ」

「え…」

「何寝ぼけてんだよ」


外はもう夕日の色に包まれ、教室には俺と沢田と後藤しかいなかった。

どうやら午後の授業からホームルームをぶっ通しで寝ていたみたいだった。


「帰るぞ」

「ああ」


ふと隣の席を見るとまだ机の横に鞄がかけられたままだった。

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