第6話 給食

またしても昼休みの中庭。今日は父さんはタッパいっぱいに入った母さん特製の焼きビーフンを爆食いしてる。


「もぐもぐ…体が若くなったら食欲が旺盛になってな。もぐもぐ…ご飯が美味しくて困る。」


「口に物入れて喋らないでよ。汚いな。」


それにしても、唐突に焼きビーフン食べたいなんてどうしたんだろう?何か思い入れがあるのかな?


「ねぇ、父さん。なんで焼きビーフン食べたいとか言い出したの?母さんも困惑してたよ。」


「ふむ、それはな。父さんは給食の焼きビーフンが好きだったんだよ。味もさることながら量が多くてな、お代わりして、いつもたらふく食えた。吐きそうになるぐらい食ってたな。」


「そんなになんだ。凄いな焼きビーフンの魔力。」


前の父さんはサプリメントやゼリーなどで栄養摂取していて、食に無頓着そうに見えた。でも昔は年相応の食欲を有していたとは、また新発見だ。


「でもな。どれだけ食っても残るから歯痒く思ってたぞ。まぁ、残ったら豚の餌とかになるんだろうけどな。というか今更ながらなんだが、給食の量はおかしいよな。」


また語りが始まった。聞く聞く、これも親孝行だ。


「俺は給食のひじきは残してたんだよ。量が多くてな。嫌いなわけじゃないんだ。小鉢で出てきたら普通に全部食うんだ。でもな給食のひじきの煮物は量が多過ぎるぞ。ひじきはあんなに食えんよ。」


確かにひじきの煮物は量が多かった気がする。いつも大量に残ってたし。


「皆大好きカレーは逆に量が少ないだろ?配られた時に、少ないなぁけど我慢するかー、って思ってたら、足りないからって、また給食当番が取りに来るんだよ。おかげで白い面積が多いカレー食わされる我々。勘弁してれと思ったよ。」


分かる、カレーは給食の定番メニューでありながら、その量の少なさに人生の無情を感じる人も少なくないと思うな。共感しかない。


「あと俺チクワ嫌いだろ。あれ給食のせいだからな。」


「そうなの?」


確かに父はチクワが嫌いだ。ハンペン、さつま揚げ等は食べるくせにチクワだけ食べないから、常日頃からおかしいと思っていた。まぁ、おかしいのは通常営業なところもあるけど。


「給食のチクワの入ったサラダが不味くてな。サラダの中に冷たいチクワが入ってるのが苦痛で、その食感に吐き気すら催した。」


「へぇ、そういう理由なんだ。」


「そうだよ。給食が不味くて嫌いシリーズは、結構いっぱいあってな。それが揃うとオカズ無くなるから、よくマヨネーズかけご飯とか食ってたわ。」


ご飯にマヨネーズかけて食べる父さんの絵は何だか寂しいものがあるが、僕も実はやったことあるのは内緒である。



「でも納豆は食べれるようになったから、そこは給食に感謝だな。」


「あんなの食べ物じゃねぇ!!」


この後、納豆好き嫌いの言い合いという不毛な口論が始まったが、そこは全カットさせてもらう。

まとめると給食も良し悪しがあるって話。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

父親が同級生 タヌキング @kibamusi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ