第13話

「よし、やるか」


一人になった俺は剣を構えてスライム目掛けて走る。スライムはぴょんぴょんとその場で跳ねている。スライムが跳んだ瞬間に剣を一振り横に振る。丁度真ん中を切り裂くとスライムはその場で消える。


全く手応えがなかったがしっかりと倒せているらしく、スライムが居た場所に魔石が落ちる。


「これで終わりか」


地下ダンジョンには俺しかいないためか、スライムの数が多い。スライムは簡単に倒せたので、かなりの数を倒せそうだ。


「これだけいれば今日中にLevel上がるかな」


俺はそう言って、周りに群がるスライムを蹴散らしていった。


何時間経ったかわからない。かなり長い時間、スライムを倒していた。


こんな時、時計が使えたらな。この世界用の時計が欲しい。

 

「そろそろ、戻るか」


そう呟いて、入り口を目指す。スライムを探すために少し奥まで入ってしまったので入り口までが少し遠い。


入り口まで戻る間にスライムを倒しまくる。落ちた魔石は拾うことなく放置している。


金は少し心許ないが拾っている時間が勿体ない。その時間があれるなら今はスライムを少しでも倒したい。


俺はそのスライムを走りながら切り裂く。すると、頭の中でピロンっと音が鳴る。


もしかして、レベルアップか!


そう思い足を止めようとしたが、出口まで後少しだった為、とりあえず、外に出る。そして、外に出てすぐにステイタスを確認する。ステイタス画面を開くと殆ど何も変わっていなかったが、一番上のLevelだけは1から2へと変わっていた。


「やっぱりLevelが上がったか」


Levelが1上がった。しかし、ステイタスの表記は全く変わらなかった。


俺は強くなれたのか?


そう疑問を持ったが確かめる術は魔物を倒すしかなかった。


Levelが上がった後の変化を体験したいが、背後で誰かの話し声が聞こえた為、その場から離れる。さっきの声は夜の警備に回る騎士だろう。最初の騎士にはここの使用許可をもらったが他の人がそのことを知っている訳じゃない。


ここにあまり長居すると騎士に怒られるかもしれない。あまり問題にならないようにしたい。


「このままバレずに帰るか」


俺はそのまま足跡や声などに気を配り人と遭遇しないように部屋に帰る。部屋に戻ると小春はベッドで熟睡していた。なので物音を立てずに静かに部屋に戻ってベッドに潜る。


目を閉じると疲れていた俺はすぐに眠りに落ちた。


誰かに揺さぶられている感覚があり、目が覚める。


「先輩、起きてください。朝ですよー。」


と小春の声がする。


「朝か」


目を開けると小春が横から揺さぶっているのが見える。俺はまだ、寝ていたいという気持ちをどうにか押さえ込み、起き上がって伸びをする。


「おはよう」


まだ、全然眠い。


「おはようございます。先輩遅いですよ。早く着替えて、朝食を食べに行きましょう。私、お腹空きました」


そう言って、小春は部屋を出ていった。


「準備するから少し待って」


と俺が言うと、


「早くしてくださいね」


と返事が返ってきた。俺は急いで部屋にある服に着替えて、部屋を出る。


小春とご飯を食べに行く。昨日の夜のようにご飯が並べられていたので適当にご飯を食べて部屋に戻る。部屋に戻った時にはもう眠気はなくなっていた。


俺らに指示を出してきた騎士がまたやってきて、


「ついてこい」


と広場に連れて行かれる。広場には何人かの騎士がいた。昨日、やらかしたから今日は大人しくしておかないとな。


1人のごつい体つきの全身鎧を纏った40歳くらいの男の前に連れて行かれる。男は俺たちを待っていたのか、俺たちがくると


「来たか。俺は王国騎士団、副騎士長。ラーベント・ゴデッドだ」


と挨拶をされた。


「昨日、伝えた通り、剣や魔法の練習をする。お前らのステイタスを教えてくれ」


そんなこと言われたか?とあまり記憶になかったが、仕方なく、俺と小春は自分のステイタスを教える。先に雪葉が


「私は身体能力E、魔力Dです」


答えて続けて


「俺はどちらもEです」


俺は真顔でそう教える。それを聞いていた小春が驚き、


「えっ、先輩なんで嘘つくんですか」


と小声で訴えてくるが、今は無視する。


「そうか。なら、イザキ、お前は俺と模擬戦をする」


そうラーベントが言い、広場に置いてあった剣を投げ渡してくる。俺はそれを受け取り構える。


「キナミはそこのサイ・ナシアが担当する。後は任せたぞ」


ラーベントがそう言うと、小春はサイと共に少し離れたところで訓練を始める。


「それじゃあ、始めようか」


そう言ってラーベントも剣を構える。そして、


「お前らには死んでもらっちゃ困るんだ。本気でかかってこい」


と少し殺気を込めて言ってきた。俺は言われるがままに、先程と同じように構える。


昨日のレベルアップがどう身体に影響が出ているのか少し気になる。ここで確かめてやる。


「さあ、こい!」


というラーベントの掛け声と共に俺は思いっきり地面を蹴って、ラーベントに向かって行った。

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勇者のおまけで異世界召喚された俺は、勇者よりも強くなってこの世界に復讐する 吹雪く吹雪 @hubuku_hubuki

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