Opus,4
春山さん……。
性格神で、容姿も可愛いとか。
奇跡のような人じゃね?
俺は身近な人が褒められて、素直に嬉しい気持ちになった。
思えば――転生してから春山さんにはお世話になりっぱなしだった。
いつか……。
俺は春山さんに本当のことを言わなければならない。
この世界に彼女が知る「田中」がいないと知った時――彼女がどんな顔をするのかが怖い。
俺は避けたい現実から逃避するように、市瀬へと視線を向けた。
「はあ……結局わからなかったな……山本先輩や春山先輩が田中先輩のそばにいる理由……。まあ、ちょっと……ほんのちょっとだけ優しかったけど……」
おーい。
独り言は独りになってから言おうねー。
「えっ、まだ居たんですか?」
そして、ゴミを見るような目はやめようねー。
「市瀬、最寄り駅から家は近いのか?」
両手には大量の荷物。
さすがにさっきまで持っていた身としては放っておけなかった。
「えっ……田中先輩……アタシの個人情報を聞き出そうとしてます?」
んん?
さっき自分から個人情報を渡してきたやん?
あれはいいん?
「ぐっ……それはちょっと面白そう……じゃなくて、お世話になってる山本先輩の彼氏さんとも仲良くしたいなーなんて思ってですねー」
今、面白そうと言いかけたよね?
「そ、そんなことないですよー」
ほほーん。
「もうアタシ帰りますから。今日は苺パフェご馳走様でした。あと荷物を持っていただいて助かりました。田中先輩……家に帰ってからでいいのでメッセください」
律儀にお礼を言って小さく頭を下げた。
そして、荷物を引き摺るように運ぶ市瀬。
おばあちゃん……。
無理はしないよーにしようねー。
そう言って俺は荷物を引き取った。
市瀬は驚いたように目を白黒させていたが「どーも、ありがとねー」と俺のノリに合わせてくれたのだった。
◇◇◇
その日の夜――。
俺は三月しゃまをヤリチン君の自称彼女さん達からどう助けるのか思案していた。
策はある。
最良かはわからないが。
机の上にはタコのキーホルダーと周辺地図。
スマホには
三月しゃまのお兄様である三月塔矢は、この世界では将来有望なピアニストだった。
今夏からパリへの留学が決まっているらしい。
だから――夏休みには居ないのだ。
やはり、夏休みに三月しゃまが誠也きゅんと出会えば、俺が知っているハッピーエンドを迎えられるはすだ。
しかし、懸念材料が一つある。
明日を無事乗り切れたとしても
だが、俺は三月しゃまに直接的に関わらない方がいい気がするのだ。
『アンタをココから出したくない……』
あの狂犬ヤンキーな三月しゃまのヤンデレな一面を思い出して、俺の背中にゾクリと悪寒が走るのだった。
◇◇◇
沢山の評価や応援、コメントをありがとうございます。
深く感謝を申し上げます。
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