Opus,3

 カフェを出て、俺達は駅と直結しているショッピングモールで買い物をしていた。


「えっとポ◯リにレモン……。あと百均にも寄っていいですか?」

「随分、大量に買うんだな?」

「はい。週末に練習試合があるんですよー。だから、田中先輩がいて助かりました。一人でどうしようかと思っていたので……」


 なるほど。

 楽しそうにしていた理由はこれか……。

 苺パフェ&荷物持ちのWゲット。


 一人、WinWin。

 俺は荷物持ちをしながら独りごちる。


「しかし、市瀬からの頼み事なら喜んで手伝ってくれるだろ?」


 特にサッカー部は女子好きな面々が揃っているし、佐之倉礼央俺様君とかは、アイドル以上に可愛い市瀬がどタイプだろうしな。


「えっー試合前にうちのエースに何させてんだーって監督に怒られるのヤですよぉー」

「そうなん?」

「そうですよー。それに田中先輩くらいがちょうど頼みやすいのでー」

「へいへい。俺くらいねー」

「何ですか?折角、褒めてあげてるのにぃ」

「いや、褒められてる気が全くしないんだが……」

「あははは」


 俺が真顔でツっこむと、目頭を抑えて爆笑する市瀬。


「女の子からお願いされやすいって……とても素敵なことだと思いますけど」


 そして、急に大人びた表情になる。


 こーゆー所に全ユーザーが惹かれたのだろうか?


 俺は未プレイのまま、俺様君に寝取られる市瀬のバッドエンドを思い出しながら、不意にそう思うのだった。



 ◇◇◇



 駅の改札口。

 市瀬から手渡されるタコのキーホルダーとメモ用紙。


「ん?」

「アタシの連絡先です。一応、山本先輩からの許可はいただいてますから」

「いや……今後、連絡することもないだろ?」

「はぁ?田中先輩、それってマジで言ってます?」

「…………」

「クラスやサッカー部の人達が喉から手が出るほど欲しがっている連絡先ですよ?」


 じゃあ、そいつらに渡した方がいいんじゃね?と心の奥底で呟いたのに。


「彼女さんと幼馴染さんがちょっと……アタシより綺麗だからって……。アタシの扱い、雑過ぎません?」


 んん?


 山本さんは解るけど春山さんって、フツーじゃね?


 俺がそーゆーと、


「はあ?前髪上げた素顔を知らないんですかぁ?幼馴染なのにぃ?女子のアタシから見てもくっそ可愛いんですけど春山先輩。もしかして……田中先輩って目が腐ってるんですか?」

 

 と、散々に詰られたのだった。

 


 ◇◇◇



 デートはもう少し続きます。

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