Opus,2
――どうして、こうなった?
西陽が差し込む生徒会室。
世界の全てがオレンジ色に染まったかのように錯覚する。
その美しい光景と反比例するように、俺の上へマウントポジションを取るように跨がる推し。
ある意味、見上げた彼女は夕陽よりも美しいのだが……。
なぜか顔は真っ赤に上気し、俺を見る目はトロンと蕩けている。
それにハァハァと荒い呼吸を繰り返していた。
啻ならぬ空気が周囲を覆う。
「漸く解ったわ。私は……田中君が欲しかったの……」と意味不明なことまで言い出している。
んん?
俺の推しが頭オカになっておられる。
おーい。
戻ってこーい、山本さん。
しかしだ。
どうして、こうなった?(二回目)
ここ一週間、
それに、山本さんがストーカー先輩の被害に遭わないように細心の注意も払ってきた。
今日もさっきまでは順調だったはずだ。
そう――生徒会室に入った山本さんを見失なうまでは。
どうやら、山本さんは俺の尾行に気付いて、生徒会室の奥にある資料室へ素早く身を隠したらしい。
俺が見失ったことに焦って生徒会へ踏み込んだ所で、なぜか優しく押し倒されて捕縛されたのだが――だけど、そこから山本さんの様子がおかしい。
俺を愛おしそうに見つめてくる。
やっぱり完全に頭オカになってそーな推し。
か細い指先が俺の頬へと触れる。
まるで大切なモノへと触れるように、慎重で丁寧だった。
「ずっと、見ていたわ……」
長い睫毛の下で揺れる瞳。
ゾッとするほど美しい顔が近づいてくる。
そのまま――押し付けられる唇。
俺は息をすることも身動きもすることも出来ずに石化するのだった。
◇◇◇
一時間後――。
俺達は乱れた制服を直しながら向かい合っていた。
生徒会室の床の上には使用済みのゴムが三つ。
俺は両手で顔を覆う。
――推しと致してしまった。
どうして、こうなった?(三回目)
ああ、そうだ。
推しから強引に誘惑されて抗うことが出来なかった。
色々とそれはそれは諸々と俺の全てが服従した。
そんなことより、推しがゴムを持っていたことに愕然とした。
そう俺はこの世界がエロゲの世界だということを忘れていたのだ。
この世界は貞操観念がはんなりなのだ。
いいや……それらは全て言い訳だ。
そんなことよりも、
「漸く解ったわ。私は……田中君が欲しかったの……」
「ずっと、見ていたわ……」
山本凛音がなぜ俺を誘惑したのか、その真実はたった一つ。
彼女には
彼女にそんな設定はなかったはずだ。
裏設定なのだろうか……?
まあ、考えても答えが出ないことは考えるのを止めよう。
つまりだ。
山本さんが見ていたのは俺と春山さんで――春山さんが大切にしていたモノを奪いたかったらしい。
「女の子にはよくある感情の一つだと思うけれど」と山本さんは言っていた。
怖っ!!
女子、怖っ!!
俺はそう思いながらも――結局は甘い雰囲気に流されてしまった雑魚い自分を反省するのだった。
◇◇◇
童貞とさよならした
しかし、余韻に浸る間もなく次話はさらなる事件が……。
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