ターコイズだけが知っている

蒼(あおい)

ターコイズだけが知っている

危ない…!!


…まったく、相変わらず危なっかしい所があるよね?君って。


私が居なかったら、今頃どうなっていたかって、いつも思うよ。


君という人生は一度きりなんだからね?もう少し冷静なこうどうをとってくれたまえ。


でないと、私の身体がいくつあっても足りないよ。


……え?放っておいてくれて構わない。だって?それは出来ない相談だ。…どうして?


君の親御さんに聞いてみたらいいんじゃないか?まぁ、答えてくれるかどうかは…別だがね。





かれこれ、君と行動を共にして、何年になるだろうね?


君と出会ったばかりの頃は、今まで以上に危なっかしいというか、忙しない(せわしない)というか…。


毎回振り回されてくたびれる程だった。


…恥ずかしい事を思い返すな?あははは!すまない。つい、ね?


君にとっては、苦い過去かもしれないが、私にとっては、どれもかけがえのない思い出なのだよ。


成長している君の隣で、ちゃんと私は役割を果たせているな。っていうね。


……ん?いや、何でもない。


これは私の…こちらの話だから、気にしないでおくれ。





さーて!次は何処へ行くんだったか…。ん…?もちろん私もついて行くさ!当たり前だろう?


しんしんと降り積もっていく雪の中。


私達より先の道には、足跡もない…真っ白な世界だ!


ここから前に進んでいくか、この場でしばらく立ち止まっているか、


それとも…振り返って逆戻りするか…。


決めるのは、君だ。好きな道を選んでくれ。


正解は一つだけじゃない。十も、百も…


それ以上かもしれない!


…ふふっ、君の眼が輝いてきたね…!好奇心という輝きが!!さぁ、行くよ!!





……試したい事がある?いいじゃないか!私はそういう君のチャレンジ精神というか、


何事にも挑戦してみようという前向きな思考はとっても好きだ!


……ん?どうしたんだい?とつぜん、だんまりじゃないか。


…?顔も赤いぞ?


……もしかして、照れているのかい?


あははは!君もなかなかに可愛い所があるじゃないか。


ふふふっ、これだから君と一緒に居るのが楽しいんだよ。





なかなか…険しい道を選んだものだね。


ここまで来るのも長い道のりだったし、そろそろ日も沈む。


明日の分の体力温存の為にも、一息いれた方がいい。


焦りは禁物だよ?


息抜きもしなければ、君自身が途中で壊れてしまう。


そういう時に限って、視野が狭くなり、危険に気づきづらくなる。


…思い当たる節(ふし)があるだろう?


さぁ、寝るぞ!!


睡眠は、人間の三大欲求でもあるんだから!欲に素直に従いたまえ!





………おやすみ。





はぁ~……これは、絶景だなぁ。


今、私は最高の気分だよ!君はどうだい?!


…この一つ一つの灯りに、一体どれだけの人達が暮らしているのだろうね…。


とても不思議な感覚だよ…。


誰かとこの景色を共有しているというのも、また、いいね。


色んな時を経て、君とこの世界を見ている…。





……。





いや、何でもないよ。


…雨が降って来るのかな?私の頬に雨粒が……。


え?雨雲なんてない?


……そうだな。


私の上にだけ、降っているのかもしれないな。





また、新しい事への挑戦かい?いいね!私はとても嬉しいよ!


きみがちゃんと前を向いて、進んでいるんだという事が。


君自身も胸を張っていいぞ!それぐらいの成長をしている。


一緒に居る私が言うんだから間違いないよ。


…それとも、君とはじめて出会った頃の思い出話でもするかい?


…え?それはいいって?


あははは。そうかい。





……さぁ、そろそろ寝ないと。





……もう、大丈夫だね。





……





『やぁ!おはよう!とても素晴らしい朝だね!


君がこの手紙を読んでいるという事は、そこに私が居ない。という事だ。


何でいきなり居なくなったんだと、りゆうを知りたそうな顔をしているんじゃないのかな?


…まぁ、そんな事は片隅に置いておくとしよう。


…黙って居なくなったのは、すまないと思っているよ。


私も、正直離れたくないと思っていた。だが、それも難しくなってきたんだ。





私の中のきらめきがね…なくなって来てしまっているからさ。


一体、何を言っているんだ?!って思っているだろう?


理解に苦しむかもしれないが、私は、言ってしまえば、とある宝石の化身なんだよ。


そして、私は、君の母親から君へと託された宝石だった。


君の身に危険が迫った時、いつも私が庇っていただろう?


…つまりは、そういう事さ。


君の事をずっと守ってきた。


光沢がなくなったボロボロの私が君と一緒に居たら、逆に危険に晒してしまう事になる。


そうなる前に、身を引いたんだ。





だが、今の君なら、私が居なくても、ちゃんと前を向いていける。


自分が進みたい方向に進んで行ける。


そのままの君で、君の夢を追い続けてくれ。


そして、思い人が出来た暁には…私の名を持つ宝石を、大切な人に贈ってくれ。


誰かから贈られることで私の力は強く発揮されるんだ。





……だから、私を…





クォイスを、忘れないでおくれよ?』



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ターコイズだけが知っている 蒼(あおい) @aoi_voice

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