光と闇のダイヤモンド

蒼(あおい)

光と闇のダイヤモンド

新しい道へ進まんとする者よ…そうだ、お主だ。……ふむ、


いい眼をしている。希望に満ちた、とても綺麗な眼だ。決して、その眼を曇らせるでないぞ?


嘘や悪意に染まれば、我のこの輝きも濁ってしまうからな。…つまり、お主に対して強い


影響力を示し続けるのだ。時には深い影を作り、時には希望をもたらす。


お主が我の持ち主として、相応しい者か…暫しの間、共に過ごさせてもらおうか…。





「神様のようだ」とな?…そうだな。その様な存在に近いかもしれん。


清らかさの象徴として、我はその名を轟かせ続けてきている。


君主次第で、我の価値も左右されてしまうのだ。それほどの力が我にはある。


賢君(けんくん)とするか、暴君とするか…それは、お主次第という事だ。


この力に耐えきれず、疲弊してしまう持ち主もいるがな。逆に、我々が持ち主を選ぶ事もある。





さて…お主は、我を手にし、何を求める?


仕事の成功か?それとも、想い人に永遠の愛を誓うか?


我はお主が望むなら、その全てに力を降り注ぐ事が出来るぞ?


ただ…


我の力を支配しよう、等と思わぬことだ。絶対的な強さ故に、


『征服されざるもの』と所以(ゆえん)がある。


我の同胞が、人間の闇に溺れ、悲しき歴史を残す者もいる…。


…その同胞が気になるのか?そうだな、少し昔の話をしよう…。





高みを目指す事は決して悪い事ではない。ただ、その目指す者の道が歪んだものなら…?


力を欲する者は、この世界に山ほど居るだろう…。そんな時だ。


強い力を持った我の同胞は、とある農夫に見つけられた。それまでは良かったのだ。


その力を手にしたいが為に、所有者となったその


当時の王や王妃が病で亡くなったり、処刑されたりしている。それだけではない。





流れに流れて、コレクターの一つとして加えられるが、


手にした者が次々と非業の死を遂げ、謎の死を遂げる者もいたという…。


持ち主に対して強い影響力を示す我らは、時として光にも闇にもなり得るのだ。


願いが強ければ強いほどにな……。


最初に我の同胞を見つけたという農夫も、奪おうとした軍師に抵抗し、両腕を落とされ惨殺されたそうだ。





話に多少脚色されている部分もあるだろうが、世の中に拡がっていったのだ…。


人間はそういった噂を信じやすいからな。


『不幸にしながら時を超える』…などと語り継がれておる。なんとも悲しき話よ。


同胞も、望まぬ結果に心も体も疲弊しきっておったわ。


……同胞の為にお主が涙を流すとは。…ん?そやつの名か?


『ホープダイヤモンド』…と呼ばれておる。





我らの名前の由来や伝説などは、その者の歴史や、最もとする意味から名付けられる事が多い。


皆(みな)の親より与えられた名前も、様々な意味が込められている。その名に恥じぬよう、生きる事だ。


無垢な心で、更なる高みを目指すと良い。


…ん?「努力するから、見守っていて欲しい」?


……ふふふ。良いだろう。我の持ち主として……


このディアンドが、これから共にお主の今後を見守ることとしよう…。





優しい心を持っておるお主なら、我の力を正しく引き出せる


唯一の存在となれるやもしれんな…。


世の中を生き抜くには、これから厳しい試練がお主を待ち受けている事だろう…。





目の前の利益だけに囚われず、何がお主にとって、最善の道となるのか…見極める力が必要となる…。


ふふっ、案ずるな。お主には我がついておる。


可能性の種は、幾多もの枝に分かれ、やがて大きな大樹となる。


お主がどんな大樹を育んでゆくのか…。


活路(かつろ)を開くのは、お主自身だ。





我は、お主が選ぶ道に全ての力を注ぎ続け、その存在を明らかにしてゆこう。


我と共に…。


ダイヤモンドが永遠に輝き続けるには、清浄無垢(せいじょうむく)でいられる事だ…。



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