エピローグ

 友樹の背中を見送っていると、追いかけてきた芽衣が梨音の背中に飛びついてきた。

「置いていくなんてひどい。……梨音君、顔が赤いけど、どうかしたの?」

 こしうでからめて顔をのぞき込んでくる芽衣は、不思議ふしぎそうに首をかしげる。

「ちょっと……」

 両手で顔を押さえる梨音は、自分の右手小指に視線しせんけた。

 さっきからめた友樹の指の感覚かんかくが、まだそこにのこっている気がする。

「私、ここを受験じゅけんする。それで合格ごうかくしたら……」

 友樹に約束やくそくしたのだから、まずは合格ごうかくしなくちゃいけない。

 そして今度こそ、自分の言葉で彼と話したい。

「それで?」

 言葉の続きを待つ芽衣に、梨音はガラスにぼんやりうつる自分の姿を見て言う。

「とりあえず、また囲碁が打ちたいかな……」

 さっき碁を打って、改めて囲碁が楽しいと思った。

 そう答えて、心の中で付け足す。

(そして仁藤君に、女の子だって伝えよう)

 まずはそこからだ。

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王子さまとニセモノ王子 とうの @touno0710

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