第4話 断罪者『死神』type. Magician


「さあ」



「お前の罪を教えてやる」



 声で正体がバレる恐れがあるため、仮面には変声の機能を入れている。周りには地獄の底から響くような低い、それでいて脳、心臓を揺らすように聞こえることだろう。



「くっ……!! お前は誰だ!!!」


 賊の頭のような奴が叫ぶ。いや、見た目がもう頭だろう。周りの賊に比べ、体がデカい。装備が整っており、飾りもたくさんつけている。いくらか魔道具も着けている。


「覚えておける時間も無いのに、名前を聞くのか? そんなことを気にする暇があったら、周りを見ろ。お前の生も長くはないぞ」 


「なに? ……なっ⁈⁈」


 振り返った賊の頭は、20人ほどいた周りの賊が皆倒れているのを見た。


 どうやって無音で賊を倒したか。


 答えは簡単。

 空間を固定し、音を震わせないようにする。

 音が外に漏れることはなく、無慈悲にも処刑場が出来上がる。

 窒息させることもできたが面白くないので、いろいろな方法で殺していく。

 火炙り、人体爆発、溺死、絞首、斬首、感電、生き埋め、圧縮、氷で作った槍でぶっさし、石化、分解。

 賊の頭が叫びだした時には処刑場は完成していた。


「さて……それでは、お前の命を置いてゆけ」


「くっ、クソがあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 最後の賊は腰の剣を抜く。どうやら魔剣の類いであるようで、少しの緊張を纏う。

 俺自身に戦闘力はないので剣同士での戦闘になれば、恐らく負けるのは俺であろう。あの筋肉量には勝てん。

 接近されれば危ないだろう。

 だから、


ザクシュッ……!!


「……ガハッ」


 賊のかしらの腹を土の槍が貫き、空中に持ち上げる。両腕を土で固定し、十字架の磔にする。

 腹からは血が留めなく流れて瀕死の状態だ。

 持っていた魔剣も手から離れ落ちている。

 この瞬間にも死が近づいているのがわかるのか、賊の頭のさっきまで威勢がなくなっており、青白い顔をさせ、歯をガタガタ言わせている。

 

 ああ、早く楽にしてあげなければ。

 腹に目掛けて3本の槍が追加で投入し、首にはギロチンがセットされる。


 「『汝、己が罪を知るが良い』」


ガッシャンッ!!…………コロッコロコロ


 断罪完了。



「ご老人、無事か?」


「……ああ、私は無事だ。だか……」


「む? どうかしたのか?」


 どうかしたのだろうか?

 爺さんの後ろを見ると、見た目若い男性の騎士が血を流し死んでいる。

 ああ……そうか。


「後ろの騎士は、我が魔術で死んだか」


「……なぜだ? お主が殺したのか?」


「我が魔術を教えよう。『汝、己が罪を知るが良い』。この魔術は、掛けられた者の罪の度合いにより処刑が自動的に行われる。その者がこの魔術により死に、仲間であったのであれば、答えは一つ。その者が今回の賊を手引きしたのであろう」


「……わしを賊から守るふりをしながら、わしを殺す計画を立てておったのか。忠義心の強いやつかと思っておったのだが。わしも人を見る目がなくなってしまったか」


「自分を責めることない。そこな騎士は心から裏切ってはいない」


「なに?」


「我が魔術には罪の度合いがあると言ったであろう。その騎士は1番苦しみなく逝ける『自然薬物』であったようだ。重い罪を持つものはそれだけ残虐に、苦しみやすく、そして、死してなお解放されない苦しみを与えられる。その騎士は罪悪感を持ち、本意ではない裏切りであるからこそ、この罪を背負ったのだろう」


「本意ではない……まさか、人質か」


「そのようだ。人質が誰か、どこにいるのかはわからぬが、忠義をかける主君を裏切るほど大切な者のようだ。主君と人質、心から悩んだことだろう。我が魔術にて生を終わらせてしまったが、お悔やみ申し上げる」


「そうだな……。人質を探さねば。此奴も救われん。わしはまだ死ねんが、わしなどの老体と比べさせてしまったことも悔やむばかりだ。今すぐにでも人質を解放せねば。近衛! 人質になると思われる関係者の話を探せ! そして、目処が立ち次第、わしの兵の6割を集めよ! 我が配下の仇を取る準備をせよ!! 早急にじゃ!!」


「我も同行しよう。我が魔術の被害者だ。自分の尻拭いはしよう。我が魔術も改良が必要だな」


「ありがたい。お主ほどの者がおるとわしも安心する」


「ああ、任せてもらおう。断罪者『死神』の名に誓い、人質の救出、誘拐した者の断罪を見事に達してみせよう」








 

 


 




 



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今、冒険者の中で話題の『死神』、その正体に迫る!! 咲春藤華 @2sakiha

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