愛がない結婚じゃなかったのですか

紗夜

第1話

「アリサス、お前もしや、、、!」

「……。」


 私は、ビーネット公爵家の当主、ルイ・ビーネット。最近話題となっているので知っているかもしれないが、私には、最近結婚した妻がいる。

 彼女は、アリサ・ガーデニア。今は、アリサ・ビーネットだが。彼女とは、ガーデニア家との縁を結ぶために、結ばれた婚約だ。

 今では、少なくなった政略結婚というものだろう。

 だから、私は、彼女とは子を成すだけの関係だと思っていた。

 ぶっちゃけると、実は、私には好きな人がいるのだ。同じ魔法省で働くアリサス。彼の仕事へ向き合う姿、上の立場の人にも物申せる姿、料理もうまくて、美しくて、、、って挙げ出したらキリがないのだが、とにかく彼に、私は、男なのにも関わらず惚れてしまった。

 今では、私のような方もたくさんいると聞いたが、貴族である私は跡継ぎを残す必要がある。

 彼への想いを閉じ込め、好きでもない私と婚約することとなってしまったアリサへ誠意を持って向き合おうと、最近家には早く帰るようにしている。

おかげで夫婦関係も、政略結婚にしては良好だ。

 まあ、アリサスが早く帰っているから魔法省にいる意味がないというのもあるのだが、、、

 いや、晩食中にこんなことを考えるのはよそう。せっかく、シェフが作ってくれたのだから、食事に集中しなくては。

 しかし、最近、以前より美味しくなった気がする。特にこのグリーンスープ。宮廷にも出せる味なのではないだろうか。

「アリサ、この料理、特に美味しいな。」

「そうですね。さすが、公爵邸のシェフですね。」

彼女の声は少し低く、落ち着く音色だ。聞いたら安心できる声とはこういうことだろう。

「屋敷の中で困ったことはなかったか。アリサ、君はなかなか外に出ないと聞いたから。」

屋敷には面白いものなどない。外に出ないのは、彼女は外に出てはいけないのだと思っているのか?私は少し焦ったが…

「大丈夫です。屋敷の書斎には面白い本がたくさんありますので。」

彼女から、輝いた瞳でこう返され、安心した。

そういえば、彼女は魔術学校に通っていたらしい。優等生だったと聞いている。それにしても、魔術の本を面白いといえる人に初めて会ったので、魔術は好きなのかと尋ねると、

「とってもとっても大好きです。」

と答える彼女の金色の瞳が一段と煌めいて見え、わたしは思わず美しいと呟きかけた。

「どの本でも読んでいいからな。」

「はい!ありがとうございます。」

魔術について話せる相手が見つかり、嬉しかった。


次の日、魔法省へ行く途中、アリサスに会い、昨日の話をした。

私が魔術について語れる人ができてよかったと話すと、

「よかったな。お前は魔術も好きだもんな。魔法省にいるくせして。」

と言われた。魔術は好きだが、魔術府にいると、魔法の使用を制限されることがある。魔法も魔術も好きなので、制限されることない魔法省で働くことにしたのだ。


……しかし、なぜアリサスの顔が少し赤く見えたのだろう?







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