第19話 領主と1頭目の馬

 領主は未だ若く30代くらいの様だった。少し神経質そうな顔をしているようだ。執事だろう男性と二人で入ってきた。

 立ち上がり頭を下げて声を掛けてくるのを待つ。


「よく来てくれた、楽にして座ってくれ。私がセポタ領の領主アーサー・セポタ伯爵である。今回来て貰ったのはテモライト号のアムルド船長やその乗客からタオルといった物を自慢されてね。

 私もそのタオルという物に興味を持ってね。どうだろう、一度見せて貰えないかな?」


 俺は頭を上げて椅子に座り、話を聞いたので自分の自己紹介をして挨拶をし、日本の無地のタオルを背嚢から出して渡した。

 領主はタオルを受け取り感触や肌触りなどを確かめていた。


「ふむ。これがタオルという物か中々良い感触と肌触りをしているな」

「はい。それだけで無く吸水性も高いのです。このタオルは私の故郷・・・・・・東の群島のさらに東の島で作られている物で、ここに来るまでに船で8ヶ月と漂流1ヶ月以上にテモライト号で約2週間かかりました。その希少価値もあるのですが、それだけでは無く故郷でも希少な品で手で作るのが凄く難しくなっております」

「なるほど、希少な品なのだな。どうだろう私にとやらを金貨6枚であるだけ売ってくれないだろうか?」

は100枚あります。もちろん嫌はなく売らせて頂きます。ただ、私は今は行商人ですが商人の一人でもあります。私のバックに付いて下さるのなら勉強して卸値の金貨4枚で売らせて頂きますがいかがしましょう?」

「そうだな、それならバックに付く方が安くなるし貴様も安心できるであろうからバックに付かせて貰おうか。

 おい、大金貨3枚と金貨100枚に我が家の紋章の入った短剣を持ってこい」


 執事に向かってそう言うと、執事は部屋から出て金と短剣の用意に出かけた。

 執事が金貨と短剣を持ってくるとそれを渡して言ってきた。

 テレパシーで金額が誤魔化されていないか執事の心を覗いて確認する。

 誤魔化されてはいない様だ。


「何か困った際はこの短剣を見せて私の名前を言えば大抵の事は解決すると思う。何かあったら使ってくれ。それとこの袋は大金貨3枚と金貨100枚だ」

「ありがとうございます。中を確認しても宜しいでしょうか?」

「かまわん」


 許可が出たので大金貨3枚が入っているのを確認する。


「ありがとうございます」

「金貨の方は数えなくて良いのか?」

「そちらは領主様を信頼してという事でございます」

「そうか、そうか。それでは機会があったら又会おう」

「はい。是非ともまた機会があればお呼び下さい」


 そう言って別れの挨拶をして大金貨3枚と金貨100枚の入った袋と伯爵家の紋章の入った剣を貰い、領主の館から出た後でインベントリに入れた。

 朝9時の鐘が鳴ったので冒険者ギルドに行った。


 冒険者ギルドで何時のの如く買い取りカウンターに行く。そこで一角兎3羽の買い取りを頼む。


「3羽合計で何時もの如く銀貨1枚と銅貨56枚だ。今日は極楽鳥はないのかい?」

「極楽鳥は今回で級が上がるから後で!」

「そうかい!おめでとさん!」


 そう言って木級のプレートを渡してくれた。

 受付に行き、手続きをすませると職員が言ってきた。


「今日で連続10回達成なので級が上がります。木級のプレートを出して下さい」


 そう言われたので木級のプレートを出して渡す。

 職員は記帳して、魔道具を使い鉄の国と市の名前が刻印されているプレートに番号と名前、年齢、出身地を刻み込んで行く。

 10分程で出来上がったので鉄のプレートを貰うと出身地が極東の島となっていたのには笑った。

 新しいプレートが手渡されたので再度、買い取り所に行き、極楽鳥の査定をして貰うといつも通りだった。ただ、唯一違ったのは貰うプレートが木から鉄に変わっていた事だった。

 鉄のプレートを持って受付で手続きをすると”おめでとおうございます”と祝福され、手続きをすませた。



 未だ朝9時で10時の鐘が鳴っていなかったので以前、商業ギルドから紹介された牧場に行ってみる事にした。

 小マップで紹介された牧場と検索すると町を出て北の方にある様だ。北門まで行き、鉄のプレートで初めての手続きをする。

 人影が無くなるまでオートナビゲータで歩いて行き、人影が無くなると音速を超えない範囲で走り出した。

 5分と掛からずに牧場に着いた。牧場の中にいる人に大声で話しかける。


「すみませーん。商業ギルドから紹介されて来た物なんですが、足の速い重馬種の馬か幌馬車に向いている足の速い騎獣等いたら見せて頂きたいのですが!」


すると牧場の中の人に聞こえたのか”入ってこい”との言葉だったので柵を跳び越えて中に入っていく。


「あ~、何だ。入り口を示さなかった俺も悪いんだが次からは柵を跳び越えないでくれるか?」


と困った様子で言われた。


「すみません。それでさっき言った様に商業ギルドの紹介状がここにあるので、重馬種の馬か幌馬車に向いている足の速い騎獣等いたら見せて頂きたいのですが?」


そう言うと紹介状を渡した。牧場の中の人は紹介状を見て何度か頷いていた。


「待たせてすまなかったな。俺がここの牧場の主のデビットと言う。馬車の騎獣を探しているんだって?」

「ええ。足の速い重馬種か足の速い騎獣等いたら見せて頂きたいのです」

「家で扱ってる足の速い騎獣となるとトリケラだな」

「どんなのですか?」

「一応、竜種の仲間だけど大人しい奴だぜ。図体がでかい分、食費と水がかかるがな!」

「見せて頂けますか?」

「ああ!こっちに来な!」


 デビットに案内されて別の牧草地に行くとそこには多少小柄なトリケラトプスがいた。


「これがトリケラですか!」

「そうだ、これがトリケラだ。今いるのは4歳の雌でトリケラは100歳まで生きるから、まだまだ子供だな。と言っても4歳ならもうこれ以上大きくはならないと思うがな!がはははは!」

「そうですか、それでこのトリケラは1日にどのくらいの維持費用が掛かりますか?」

「そうだな、重馬種3頭分の飯に水と塩を2頭分といった所だな。それと町に入った時に大きな宿屋じゃ無いと厩舎に入らないから宿屋に泊まる場合には高い宿屋になるな。まぁ、どちらかというと大きな商人が何台もの荷馬車を引き連れていく用の騎獣だな」

「1頭でそれだけの力を出せるのは凄いが、幌馬車1台分には過ぎた騎獣だ。他にお勧めはないのかい?」


 そう言うとデビットが考え出した。閃いたのか此方を見て言う。


「幌馬車1台分というならやはり重馬種かな?竜種が好きなので先に此方を進めたが重馬種を見に行くか!」


 デビットがそう言うと、別の牧草地へ案内した。


「ここにいるのが2歳~4歳までの若い重馬種だな。重馬種は今は2種類いて少し値が高いが足の速いシャグネル種と荷馬車によく使われるゴント種だな。こりらにはどちらもいて合計で10頭いるよ」

「少し見せて貰おうかな」


そう言って重馬種を1頭ずつ

端の方に1頭だけいた青毛の馬が目に留まった。

『他の馬よりも賢く力も足の速さも上で軍歴があり、牡馬であり種牡馬にも特に高い適性があり子孫には力と足の速さが伝わりやすい』との詳細だった。

 デビットさんにその青毛の馬を聞いてみる。


「ああ、あいつは辞めといた方が良いぜ。種族はシャグネル種で今は3歳馬だ。軍馬として訓練を受けて軍でやっていたんだが、騎手が乗ると途端に突然馬が立ち上がり騎手を落馬させて死なせちまったんだ。当然、死ぬ所だったのを俺がたまたま見ていたから安値で購入したんだ。でも、1年近く経っても誰も縁起が悪いとの事で購入されなくてな。今では立派な不良品だよ」

「ふ~ん、縁起が悪いのは嫌だな。でも安値で不良品って事は売値は安くなるって事だよね。幾らぐらいになるの?」

「購入が銀貨10枚だったんで最初は銀貨20枚で売ろうとしたが売れずに今じゃ銀貨8枚の赤字だよ!」

「銀貨8枚か。どうしようか?そうだ!1週間後にある馬市場で購入した馬がいたらその馬と一緒に幌馬車を引く訓練などを施して貰って2ヶ月間預かってくれるなら銀貨9枚で買う。馬市で購入した馬を預ける時には別に銀貨3枚付けるからさ。もちろん俺に幌馬車の操縦方法の教授も込みだ!それでどうだ?」

「う~ん。このまま赤字でいるよりはマシか。わかったそれで良いよ」

「それじゃ契約書を作るよ?

「それじゃそれに基づいて普通契約用紙に書いてっと、よし、本番と予備に間違いが無いか見てくれ」

「・・・・・・見た所、問題はなさそうだ」

「それじゃ、これ銀貨9枚ね。俺とデビットさんの二人のサインがいるからここの下に書いて」


 そう言って俺とデビットさんは普通契約用紙にサインした。


「それじゃ、予備は商業ギルドに保管して貰うからこれからよろしく!」

「ああ!じゃあな!」


 俺はデビットさんと別れて商業ギルドへテレポートして予備を預けた。



―――――――――――――――――――――――――――――


もし、出来ましたら目次の下の方にある評価の方をよろしくお願いします。

何かお気に召さないと言うかたは★☆☆を、少しでも気になるという方や普通だなと言うかたは★★☆を。何か気に入ったや続きが気になるという方は★★★を付けて下されば幸いです。

♡で応援するでも良いのでよろしくお願いします。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る