第15話 答え

昔、来たことがある。何回か…

小学生の頃か。この団地は覚えている。


【行ってきますー】

女のコの声がした。


【やっぱ、寂しいな、離れ離れ…】

可哀想に、転校かな?不安だよなー。


でも、この女のコ見覚えがある。誰だろう?


あー、そうか!私立チームの!

俺と二人だけだったなー。やはり寂しいよな。

るいちゃんだったかな?


ってだから、何でここなんだ!ここに何があるんだ。

ここに飛ばされたって意味は?


ん?また暗闇だ。えっ?すぐに光に包まれた。

今回ばかりは何でこんなに変わるんだ?

しんどいぞ。時間移動激しすぎ。


【もう、休日出勤最悪!残業続きなのに…】


同じ団地だ。場所は変わっていない。

そばにいるの、魅力的な女性だなー。

見たことあるような…


ん、この女性!俺は知ってる。間違いない!

面影が残ってる。大人になった、るいちゃんだ。

私立チームって勝手に呼んでいてが、たった二人だったよな。中学から私立に行ったのは。

私立チームって呼び方、なんか心強い感じで、

俺だけだな、そう呼んでいたのは。


突然、時間移動から開放、地面に叩きつけられ、

転んでしまった。その女性の目の前で、

かなり恥ずかしい…でも凄く痛い!

 

眼の前でびっくりさせたなー。やば、ほんと痛い。


【痛ー、!】


我慢出来ず、思わず情けない声が出てしまった。


【大丈夫ですか?】


【大丈夫です、すみません】


恥ずかしくて顔見れない、でも女性は心配そうに見ている。仕方ない、覚悟して見上げると、


【大丈夫そうですね、良かった】


少し笑われてしまった!


【違うです、いきなりここに飛ばされて…】


何言ってんだ?俺。相変わらず最初の言葉が

駄目駄目だー。


【私立チームでしょ!久しぶり!】


えっ、えーーーーー!


【るい!……ちゃん?】


俺の記憶が正しければ、たぶん、合ってるよな。

面影あるが、雰囲気は変わったよなー。まぁ、大人ってことだから当たり前か。


【ちゃんが遅い!しかもいきなり下の名前で、もう人妻です。まぁ…名字変わってるし、るいでいいや】


【ごめん、るいさん】


【るいでいいって、るいさんは嫌】


【ごめん、るい…】


【涼ちゃん、時間ある?今夜】


マジですか、俺はいいけど、マズくない?

これって。人妻でしょ?


【とりあえず、急いでるから、今夜ね、はい、

ここね、待ち合わせ】


そういうと、るいは凄い速さで走って駅の方へ

向かっていった。


俺はユキのことで、何でここに飛ばされた?

よく解らん。とりあえず夕飯は、るいと、

いいのかな?手描きのメモ、慌てて書いたな。


その日の夜、待ち合わせしたレストランへ。


【待っちゃった、ごめん】


るい、走ってきたな。香水と汗の匂いが少し。


【もう、汗臭いよね、ごめんね】


【全然、むしろいい匂い】


それも言い方まずいな。人妻に対して。

るいはそれを気にもせず、話しだした。

俺は男として見られてないな。


【ちょっと気になることあってね、時間ないから、

ストレートに言うね、目の前にいきなり現れたのは、ユキのことでしょ?知りたいからでしょ?】


止まった!心臓が間違いなく。呼吸が出来ない!

視界が狭く、意識を失いかけた、いや、失った。

数秒から数十秒くらいか。


何故知ってる?ユキのこと。それも俺から何も言ってない。


【冷っ!なんだいきなり】


【しっかりして!冷静に受け止めて!】


るいが心配そうにしている。けど、いきなり水かけるって、行動凄いな。


【涼ちゃん、全て知るために来たんでしょ】


平常心を保つのが難しい、何を知ってるんだ?

ユキのこともなぜ知ってる?

冷静に、とにかく冷静に。聞いてみよう。


【るいもユキも同じ世界の住人なの】


冷静に、冷静に。まともに一気に理解したら精神が壊れる。とにかく聞いてみよう。質問は後だ。


【続けるよ。大丈夫?意識失ったらすぐ水かけるからね】


俺は小さくうなずいた。


【ここまで何回か声聞こえたよね?あれは涼ちゃんの分身、それはドッペルゲンガー、涼ちゃん三回目の声を聞いたからもう二度と聞くことはない】


【次に私と触れてしまったことあるよね、自転車を出そうとしたときに、そこで時間移動した、あの時私も大変だったよ】


【ユキはね、私は何度も止めたよ。何かあるとすぐに涼ちゃん助けに行くんだもん。何度もパラレルワールド行来しちゃいけないの、使うの寿命、それも凄く】 


【今、ユキは元の世界に戻ってる、涼ちゃん、目の前で消えたよね?でも何かユキが身につけてものない?香りが残ってるものとか。僅かでも香りがあれば生きている証拠、タイムパラドックスが起きている世界だから、とても大変だけどね】


ハンカチを握りしめ、香りを感じた俺は叫んだ。


【ユキに会いたい!寿命いくら使ってもいい!、

頼む、ユキのところへ!どうすれば?】


そう叫んだ瞬間、また水をかけられた。


【意味解ってる言ってるの?ユキは寿命使い果たしてパラレルワールドの最初から始めてるの、それに寿命使い果たしたってことは向こうではもう記憶ないの、涼ちゃんのこと覚えてないの】


【それにもしユキの世界に行けても、今度は涼ちゃん記憶失うかも知れない。ユキと私は覚えて行来出来たけど、パラレルワールドの世界のこと知ってる人にこっちで会ってないもん、ユキ以外に】


【もうずーとすれ違う人生繰り返すことになるの。それで精神が終わるとき、繰り返しも終わるの、永遠なんてないの、だから、ユキに忠告したのに…

私は何回も行来なんて無理、それほどしんどいの】


るいのほうが冷静で無くなった。少し震えている。るいも寿命使ってるんだよな。


【こっちでたった一人、パラレルワールドの記憶を持った人に出会えたのに…前にユキのこと覚えている人いるかを確認したでしょ、涼ちゃんに】


【ユキとはね、緊急以外は会わないようにしていたの。タイムパラドックス起きないように。パラレルワールドの記憶ある人同士の接触なんて危険すぎ】


ユキは元の世界に戻ってもう一度やり直している。

二度とお互い出会うことはないが…

俺は何も言葉が出ない。答えはどこにある?


【涼ちゃん、この先のこと考えて。玲奈って女性と出会うまで時間はあるけど、苦しいときはいつでも頼ってきていいから】


るい…それは助かるけど、るいの人生は?

それにしても、るいも何でも知ってるな。

パラレルワールドの能力って凄い。


【るい、ありがとう。でも俺は大丈夫。ユキの幸せを願ってる、これからのユキの人生守らないとね】


言葉と反対に涙が止まらない、ユキに会えない悲しみなのか、ユキがパラレルワールドで生きている嬉しさなのか、答えは見つからない。


でも嬉しいのかもな、ユキ、幸せにね。


そう決断した俺を感じ取ったのか、るいは

すかさず、笑顔で、一言。


【んー、カッコいい!涼ちゃん。惚れそう!】


【人妻だろ。お断り!】


【そうでした。無理でした。じゃ、帰るね】


【るい、辛くなったら俺に話せよ。もう一人じゃないからな、今度は俺が力になるよ】


【人妻口説かないで、惚れさせないで、そういう言葉、玲奈に言ってあげて】


【涼ちゃん、人妻とか嘘言って諦めようとしてるの私かも。ここじゃないのかな?私の望む世界…】


なんか、るいが呟いた。声小さすぎて聞こえない。


【聞こえなかった、なんて言ったの?】


【いいの、気にしないで、じゃ元気でね】


そう言って、るいはレストランから出ていった。

るいがこの世界にいる理由とか聞けるとき

あるかな?人妻だし、簡単に会っては駄目だな。


俺は冷めてしまった、コーヒーを飲んで呟いた。


ユキ、最高の時間をありがとう。

想い出ありがとう。俺はずっと忘れない。


俺はもう迷わない、戻らない。

玲奈と会って元の時間を取り戻すんだ。


ユキの香りがするハンカチを手にとって誓った。


ん?ところで、ドッペルゲンガーって何?












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