第10話 旅立ち

ユキの存在を知ってる人がいて、過去に戻ったときにユキに出会ってる。将来の恋人。

時間軸調整課、理解に苦しむな。

あれから何日も普通に朝を迎える。

普通ってのは翌日ってこと。何回も過去に戻った俺は普通だとホッとする。


とりあえず男子校、6年間、乗り切るしかない。


タロ、行ってくるね。いつも玄関まで来てくれてありがとう。やっぱとっても可愛い性格。

顔はそこそこだと思うが猫の世界の基準解らない。


あーあ、未来に飛べたらなー。この6年間苦痛でしかないんだよなー。授業時間も普通より長いからなー。土曜日もあるしな。


【こんにちは、元気だった?】


おっ、小学校からのたった2人の私立チーム!

男子校、女子校だが。


【おはよう、女子校生活どう?】

【楽しいよ、普通に、そっちは?】

【つまらん、共学が良かった】

【なにその判断基準、文化祭に期待だね】


そんな馬鹿な会話で帰ろうとしたときに。


【自転車出せないー!】


女子の力では無理だよな、この時代自転車保管ってめちゃくちゃなんだよな。

この時のこと覚えている。俺が親から聞いた。


【自転車出すの手伝ってあげたんだね、偉い!】


えっ?俺手伝ってないよ。なんで?

大人になってから考えれば、手伝ってあげれば良かった。彼女も女子として見られることを期待していたのかなー。俺の勝手な妄想かも。


【どいて、俺が出すから】

【ありがとう】

ちょっといい気分、って思った瞬間手が触れて、

痛っ、静電気!


ん、?何だこれ、漆黒の世界。


ターニングポイント!やってしまったー、せっかく落ち着いて過ごせる世界だったのに。自転車出すの手伝ってはいけなかったんだー。


漆黒の世界はもう慣れてる。目を閉じて寝てって、成長していくと簡単に眠れない。


前程怖くない、抜け出せない訳ではない。いずれ疲れて眠ればどこかの世界に行ける。


【動かないで!そこにいて!】

ユキ!!!間違いない。忘れもしない、ユキだ。


【どこだ!ユキ!】

ふっと温もりが伝わってきた。ユキが手を握ってくれた。安堵から気を失いかけた。どれだけ不安だったんだ。俺。情けないなー。


【時間軸調整課ユキです。レベル5です。至急ルート固定お願いします】


【ユキ、会いたかった!】

【すみません、レベル5なのでとりあえず言う通りにしてください、間に合わなくてすみません】

【いいんだ、とりあえず手を離さない】

【ルートに乗ります、手を離さないでください】

【ユキ、離す訳ないだろ、ユキもここに居ろよ】

【意味解りませんが、動かないで!】


漆黒の世界から日差しの温もりを感じる世界に

移動?というのが正しいか解らないが来てしまった。


ユキ、どこだ?どこにいるんだ?離さないっていったろ。手を強く握っていたはずなのに。


返事してくれ、ユキ!!!

日差しの温もりを感じたが、心は凍えそうだ。

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