6-4 再会
「くるみ、今度の日曜日は何か用事入ってる?」
くるみに電話をかけたのは、木曜日の夜九時頃のことだった。
「今度の日曜日は、買い物に行こうと思ってたのよ。山河駅の駅ビルあたりに」
くるみはそう答え、一緒に行かないか、と尋ねてきた。
「勿論、いいよ」
「新しい帽子が欲しいのよ」
「帽子ねぇ」
結局その日は、日曜日の十時半からデートすることを決め、僕は電話を切ったのだった。
日曜日、僕らは山河駅で待ち合わせ、買い物を楽しんでいた。
「こんな帽子が欲しかったのよ。どう、似合う?」
「まあまあ、似合ってると思う」
「もう。本当にそう思っているの?」
「本当に思っているよ。でもさぁ、帽子なんてどれも同じじゃないのかな」
僕らは笑いながら、ショッピングをしていた。
「じゃあ、私この帽子の支払いを済ませてくるね」
「分かった。僕は店の外で待ってるよ」
僕はそう言って、駅ビルの通路へと出た。
−−あれ? 三上さん?
「カナタ君?」
間違いない。イギリスへ留学していた三上さんが、今、目の前に居た。
僕らは見つめ合った。
「どうしてた? 四年間」
「四年間、ずっと学んでいたの。ずっと、ずっと。帰る時間を惜しんで。だから、手紙とかあまり返信できなくてゴメンね」
三上さんは、たどたどしくそう語った。
「小説は? 小説は書いていたの?」
僕の問いに、三上さんは首を振った。
「忙しくて。文学の研究はしていたんだけど、創作は余り……」
「そうなんだ」
「書き続けるって、大変なことなのよ。モチベーションが上がらなくて……」
「カナタ、お待たせ」
くるみが、帽子を入れた買い物袋を手に、店から出て来た。
「カナタ、知り合い?」
「うん。ちょっとした友達なんだ。紹介するよ、三上美希さん。イギリスへ留学していたんだ。四年ぶりに会ったんだよ。三上さん、こっちが『くるみ』」
「はじめまして。くるみです。カナタとは、小中学校の同級生なの。よろしく」
くるみはそう軽い声で告げた。少し表情が固くなっているようだった。
「こちらこそ、よろしく。私は、三上美希と申します。カナタ君とは、高校の同級生なの。四年間、イギリスへ留学していて、この夏に山河市へ戻ってきたの」
僕は静かに話す、ふたりを見ていた。
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