第2章 海の風景写真
2-1 初めてのアルバイト
桜の季節には、まだ一か月程早い。山河市の桜が見頃となるのは、四月下旬。ゴールデンウィークが始まるころ頃から、花は盛りを迎える。今年の桜も、三月下旬の今頃には、まだ固いつぼみである。
西峰高校の二年生へと、この春から進級する僕が、春休みの最初にしたことは、人生で初めて、アルバイトをしようと動いたことだった。中流程度の経済状況で、公立高校に通う僕は、それ程お金に困っていたのでは無かった。進学校の普通科に在籍している僕が、アルバイトを始めようと思った理由のひとつは、カメラのレンズが欲しかった為である。日曜日の休みに、ファースト・フード店で稼げば、その目的を実現出来そうだった。
カメラのレンズは、安くても一万円。高いものだと軽く十万円を超える。レンズが欲しい、と父にねだったら、「アルバイトをしなさい」と返されたのだ。
何のアルバイトが良いか、散々悩んだ末、香子姉さんの「好きこそものの上手なれ」といういつもの台詞をぶつけられ、ファースト・フード店でのアルバイトの入社試験のための、履歴書を書いていた。
「……次は、志望動機か。ここが一番大事だな。さて、何を書こうか」
僕はかなり悩んだ挙句、「ハンバーガーが好きだから、入社を希望いたします」と書いてしまった。
ハンバーガー・ショップで頼むのは、大抵一番安いハンバーガーと、フライドポテトのLサイズ。だから本音を言うと、フライドポテトだけを頼みたいのだが、それだけだと気が引けるので、ハンバーガーも注文するのだ。
いつか、憧れの三上美希さんと一緒にハンバーガー・ショップへ行くのが僕の夢である。そして、フライドポテトを二人で一緒に食べたい。もし、三上さんがフライドポテトが好きだったら、の話である。好きだろうか。
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