第30話 帰路・使わなかったアイテムのテストをしてみよう

 神器を地上に持ち帰った後、ポルフに話しかける。


「なぁ、ポルフ。あの最下層にあった神器はお前の持ち物・・・・・・でいいんだよな?」

「さぁ、他に所有者も居ないし、そうなんじゃねぇか」

「あぁ、わかった。それだけ確認しておけば十分だ」


 そして、主立って戦闘をしたアイゼンバーグ隊は犯人を護送しつつサキセルの町に帰る準備を始めた。

 回復用のレリックを使って、外傷を治癒しているのだが、これが結構時間がかかるうえに、途中で栄養補給が必須と来て使い勝手が悪い。

 食べて寝て、食べてまた寝てを繰り返すこと大体一時間でようやく帰還の許可が出た。


 アイビー隊は事後と被害状況の確認、被害者のケアなどを担当するとのことで、被害者だけ先に馬車で送って明日もここで事後処理をするらしい。

 回復もしたし、あとは帰るだけとなったときに、トレハが声を上げた。


「隊長!今回の戦闘で岩を相当数消費したので、途中に採石場があったら寄りたいのですが可能でしょうか!」

「トレハさん。今日は生きてい犯人の護送なので、ちょっと無理そうですね。

つるはしで叩いても必要な岩の採掘だと一、二時間結構時間がかかるじゃないですか」


 今は分からないが恐らく午後三時ごろ帰る時間を考えてもそこまで長時間のより一はできないか。

 時間がかからなければ問題ないなら、あれが使えるかもしれないな。


「だったらこれ使ってみませんか?地下で使おうと思ったのですが、威力がわからないので人の少ないところで性能テストしてみたかったんですよ」


 そう言って、アイテム一覧から円筒形のアイテムを取り出す。

 見た目は金属製の筒の端っこにボタンのようなものがついているだけのスプレーボトルのようなものだ。


「それは……魔力タンクですか」

「はい、既存の魔力をためておくだけの筒でした。

それにちょっと改造を加えてとある魔法を付与してあります。

これなら採掘の時間を大幅に短くできると思いますよ」


 砕石ができなくてもこの製品のテストだけでいいと懇願してなんとか提案が通った。

 彼女が折れたと言うよりは、先の戦闘で使う予定だったが威力がわからなくて地下で使えなかった謎のアイテムの実力が見たかったが正解だろうか。

 途中の岩がむき出しになっている岩山に止まって砕石をすることになった。


「先ほどの物体ですが、エクスプロージョンと言う魔法を付与してあります。

要はこれ自体が小さな爆弾ですね。」

「でもよぉ。見た目は普通の魔力タンクじゃないか。それが爆弾とか信じられんぜ」

「えぇ、そのために少し弄っています。テストが終わって配備できるようになれば色とかデザインは変える予定です。

で、使い方ですが本来は魔力を吸い取ったりするときに使われるこのボタンを、起爆用に改造してあります。

使い方は簡単で、ボタンを押したまま振りかぶって、それから投げます」


 カチッとボタンを押してから人の居ない岩場に向かって投げた。

 破片での怪我を鑑み、自分はシールドの後ろ、他のメンバーは二十メートルほど離れて見学してもらった。


 爆弾を投げて約三秒後、投げた爆弾を中心に半径五メートル、深さ三十センチくらいの穴が開いていた。

 爆炎が晴れて安全を確認してから近づき、岩場の様子を見る。

 砕け散った岩は投げるのにちょうど良さそうな三十センチ位の塊と砂利が無数に散らばっており、性能テストの結果としておよその破壊範囲を記録しておく。

 あと破片の散らばりを見たかったが、十メートルも離れていない自分のシールドすら傷がついていないからあんまり散っていない可能性が高い。


「想定より爆破の範囲が広いですね。

高さも同じだと仮定すると五メートル半径……やっぱり室内では使えないな……本来室内制圧用の破片型グレネードを想定していたんだけど。

……これだと爆破解体用の爆弾以上の威力じゃないか」

「なんですか、この威力の爆発……地形がえぐれているじゃねぇか」

「こんなものを室内で使おうとしていたんですか」

「この範囲つるはしで掘るのに一時間はかかるぞ」


 口々に爆破についての感想を口にする。

 それも仕方ない、これは予想以上だしこんなものを無許可で使おうとしていたのはボクだからな。

 復活に甘んじて破壊し尽くすのはさすがにダメだったっぽいな。


「まあ、実験中の道具なので他言無用でお願いします。

ところで、岩の数は足りますか?」

「あ~、もう一カ所ほど爆破したら多分足りるかな」

「わかりました」


 それから一人では離れた岩場に赴き、もう一つ爆弾を転がして同じ程度の爆破を行ってからから撤収した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る