ーソシュールの予言ー


 ゆるく太った猫が、とがった牙をむき出しにして、私の肌をひっかく。なんども、何度も、ナンドモ。


 私はその猫を、かみつき猫のソシュールと名付けていた。


「君は、どうしてコトバを使うんだい?」

 ソシュールが鋭い目を私に向けて怒鳴りつける。


「私は、世界が狂っている。間違っているということを、証明したい!」

 私は胸を張って、大声を叫びあげる。



 世界が間違っていることを知っている私と、私が悲しみ嘆いていることを知っている猫が奏でる協奏曲は、まやかしのことばと言葉とコトバ。

 全部が嘘に化けていく、うすっぺらいカデンツァ。

 見えない音が空の彼方に弾けては、世界の端に沈んでいく。


 痛みを塗りなおしては、私は消えない傷跡を心に宿していく。

 現実にやたらと噛みついては、猫は冷たい壁に風穴を広げる。


 私は牙なんて持ってない。

 そう。だからいつか、ソシュールに頼るんだ。



 To be continued……


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世界に見えない君のカタチ 月瀬澪 @mio_tsukise

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