お兄さんに見えない あの男は?

帰宅後、湊は春乃を連れて、えりの家に向かった。

ピンポーン。


「急にゴメンなー」

「ううん。春乃ちゃん、こんにちは」

「こんにちは!」

「しっかりしてるねー」

「兄の教育がいいから」

「ハハッ。孝司に春乃ちゃん来るよって言ったら喜んでた」

「良かった〜。谷川に声かけて良かったよ。いきなりでびっくりしたよね?」

「うん」

「アハハ。だよね。でも、良かった〜」

(帰りも思ったけど、全然話しやすいな…)


家の廊下を歩きながら、そんな話をしてると、奥の部屋から、若い男の人が出てきた。

「すいません。お邪魔してます」

お兄さんかなと思いながら、湊は挨拶をした。


その人は、明らかに嫌そうな顔をした。

えりが、慌てて、湊と春乃の説明をした。

「あ、あのね、小林君の妹が、孝司と仲良しらしくて。一緒に遊ぼうって…」

その人の顔は、怒っていた。

「ふーん。…。ごゆっくり」


えりとその人のやり取りを聞いていると、湊は2人の関係性がわかった。

(お兄さんには、見えないし…。彼氏さん…?)

その人は湊を睨んで行ってしまった。

(あぁ…、誤解させたか…。申し訳ない…)




※『彼は魔法使いで意地悪で好きな人』(同作者)の

第12話 絵理が一緒に帰って来た男

参照




春乃と孝司は、孝司の部屋に行って遊んでいる間、湊とえりはリビングで、お茶を飲みながら話す。

「さっきのさ、谷川のお兄さんじゃないよね」

「うん。訳あって同居してる人」

「あぁー。なるほど。ごめんね、何か俺の事、勘違いしたよね」

「ハハッ。ないない。…」

「?大丈夫?彼氏、明らかに怒ってたよ…?」

「あぁ、大丈夫。彼氏じゃないしね…」

「そうなの?」(まだ付き合ってないんだ)

「うん…」

「じゃ、尚更悪かったね…」


「…ううん。それより、孝司と春乃ちゃんて、ホント仲良しなんだね。楽しそうで良かった」

えりは、話を変えた。

「そうだね。あんなに仲良しだとは」

「ね」

「春乃、気が強くてさ。なかなか友達できなくて。心配してたんだけど」

「そっか」

「孝司君が声かけてくれたみたいで。そっからメロメロ」

「メロメロ…?」

えりは笑った。

「そ、メロメロ」

湊も笑った。

「これからも、よろしくね」


「で、俺からさ、あの人に事情話す?」

湊は、ニッコリ笑って言った。

「え?!大丈夫、大丈夫!」(話換えたのに、また戻したな…)

「ホントに?」

「ダメダメ」

(もう、一息でちゃんとした両思いになりそうなのに…。おしいな…)

「話そうか?」

「言わないで」(しつこいなぁ…)

「そっか」

そっかといいながら、湊は首を突っ込む気満々だった。

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