第24話 沢山もらっている

 お兄ちゃん達も変わらずで仲良く出掛けたり、性行為したりしている。

 先生は、多分私が好きでもそういうことを我慢しているように感じている。

 私の気持ちを少しだけでも理解して寄り添ってくれようとしている。

 けれど、夏休み。先生と泊まりで遠出をした時には我慢が出来なかったらしい。

 夕食を食べて、別々にお風呂に入って、スマホ見てダラダラしていた。先生が

「寝るね」

と言うので、電気を消して別々のベットで寝る。

洋のホテルでお洒落なベットだったからそういう気持ちになったのかは分からないが

「一緒のベットで寝たい」

と言ってきたため、仕方なく向かい合って寝ようとしていた。

「キスしてよ」

そう言ってきたので

「何かあったんです?」

と聞いたら

「何かなかったらキスしたらダメなの?」

「別に」

そっとキスすると、先生は私を抱き寄せた。私は髪を撫でてあげる。

「あのさ」

「はい」

「僕、茉裕ちゃんがいて、明日も頑張ろうって思えるよ」

「先生、まだ若いんだから」

「……」

「ねぇ」

「はい?」

「眠い?」

「まぁ」

「僕、下手だ」

「何が?」

「口説くの」

「へぇ、意外ですね」

「全然、興味ないよね……」

と言って黙った。

「別に、ただ、めちゃくちゃにされている時に風李さんって呼びたくないし、将次さんも嫌でしょ?」

「……」

「おやすみなさい」

と言って背中を向けると耳に息をかけられる。声が漏れる。

「茉裕ちゃん、僕達が今からすることは秘密」

先生は起き上がっていたため、私もゆっくりと起き上がる。

 しばらく、先生の目を見ていた。

「いいの?」

「はい」

と答えて、目を閉じると唇が触れる。舌を入れられて絡められる。そのまま押し倒されて服を脱がされる。出先のシーツ汚さないでほしいと言うと先生は自分の使っていないバスタオルを敷いた。

「綺麗だよ」

と言われて胸に触れられる。

「柔らかい」

と言われて恥ずかしくなった。

 それからは流されるままにされていて、先生もそこまでしたいという性欲があったんだなと驚いた。

 翌日、朝食を食べてからチェックアウトをして帰る。帰りの車の中では会話はなかった。


 冬にも先生と遠出をした時にした。

夏の時と流れは似ていた。なんとなくでそうなる。

先生のことはいつのまにかそういう目で見るようになっていた。風李さんを超えるということはなくても好きだったし、その先に進むことに抵抗もなかった。

「いいの?」

「はい」

「じゃ、行くね」

と言われた。

「ちょっと待って」

「ん?」

「シャワー浴びてきます」

「いいよ。シてから浴びよ」

優しく唇に触れてきた。

それからは、もうされるがままだった。

自然と声が出る。

「可愛い」

と言われて嬉しかった。

突かれる度に声が出て止まらない。


 次の日の朝、浴槽で聞いた。

「風李さんとこういうことしたんですか?」

「流石に中に挿れるのは無理矢理断ったけど、まぁそれなりには」

「そう」

「一方的だったから」

先生は天パの髪を洗う。

「誰かと付き合ったりとかは?」

「んー、あったけど、本当に好きだっと人とはない」

「えー、嘘ー」

「ほんと」

そう言いながら泡を流していた。

「兄さんと似ているから二番手って感じで好いてくる人が多かったし、告白してくる人はね」

「本当に好きだった人は?」

「兄さんのことが好きだった子達。みんな別れたみたいだよ」

「そう」

先生の身体は肉はついているが細身で筋肉質。

お腹周りも少し割れている。触ると硬い。

「何?」

「ふふ、なんでもない」

「華奢だな、ちゃんと食べてるか?」

「少食なんです」

笑った。

「そっか」

そう言って私の頭を撫でた。

「茉裕ちゃんの髪はサラッサラで気持ち良いな」

「先生だって」

「僕は癖っ毛だから」

と言った。

お風呂から出て、ドライヤーで髪を乾かす。先生はその間に歯磨きをしていた。

朝の七時。ホテルのテレビをつけるとクリスマスは雪になるかもしれないという予報をアナウンサーが言っている。

「クリスマス、どっか行きたい?」

「先生こそ、何が欲しい?」

「いいよ、僕は」

「私も沢山もらっているから」

二人で微笑みあった。


 クリスマスは近所の公園の端っこで先生と待ち合わせて雪合戦をするわけでも雪だるまを作るわけでもなく、積もった雪に足跡をつけた。

「寒いですね」

「うん」

「先生、手繋ぐ?」

「繋ぎません」

「ちぇ」

と言って手をポケットに入れた。

「茉裕ちゃんはさ、卒業したらどうするの?」

「映像関係の仕事をしようかと」

「ほー」

「これ、風李さんから貰いました」

去年貰ったカメラを見せる。

「ほう」

「先生撮りますね」

「えー、撮るの?」

「イケメンに撮ってあげます」

シャッターを押した。

「イケメンだよ」

「兄さんに似てるって言うと思ってた」

「んー、言わないだけです」

「そっか」

切なく、下を向いてしまった。歩き出す。私はそれに着いて行く。

「兄さん、やっぱり好きで堪らないんだ?」

「……もし」

「ん?」

「私の学校の先生が風李さんだったら、私、今みたいに将次さんみたいに泣いたり、我儘言ったりは出来ていないと思うんです」

「兄さんが、学校の先生じゃなくて、実況者で、ほんと今と同じような感じで、茉裕ちゃんのことを恋愛的に見てくれていたら嬉しかった?」

私はチラッと先生を見るが、上手く見れない。

「でも、お兄ちゃんとそういう関係になってから、私と喋るようになったし、今のままでいいのかもしれない」

諦めてる。でも心の中では諦めきれなくて、人間って面倒くさい生き物だとつくづく思う。

「あのさ……」

「はい」

「僕と……キスした時、性交した時、どう思った?兄さんじゃなくて辛かった?裏切ってるみたいだった?それとも、ただ単に気持ちかった?」

「えっと、それは」

「ごめん、変なこと聞いて」

「……初めは、悲しさがじわじわと込み上げてきた。でも、先生……優しいから」

「ごめん」

「謝らないでくださいよ」

「今更だけど、なんか、僕のこと嫌いになってくれた方が楽なのかなって思って」

「なんですか、その言い方」

「いや、だって、茉裕ちゃんは」

「私がなんなんですか?」

「いや」

「私が忘れたい。風李さんのこと忘れたいって言ったら、忘れてられないって言ってくれたじゃないですか……風李さんに私はまだ溺れてるけど、先生にも溺れてしまいそう」

唇を軽く噛む。寒さで鼻を啜る。

「もう一回聞くけど、本当にいいの?」

「はい」

「後悔しない?」

「しません」

「……なら、いいんだ」

と私の肩を軽く叩く。

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