第21話 ぼっち、ゴーレムダンジョンに潜る 1

 魔王先生との特訓は放課後、こっそりやることにした。

 日程は不定期だけど週に2、3回程度。それに加えてナルさんの指導で私は毎日、運動を始めた。

 場所は探索者用のジム、ライセンスがあれば割引になるらしいから切音さんと一緒にいくことにしている。

 トレーニングを初めて何日か経ったけど、思ったほど苦しくない。

 それどころか運動が楽しいと思えるようになってきた。

 特に魔王先生の教え方がうまくて、すごくスッと覚えられる。

 学校でヒヲリさんに聞いた話だけど、魔王先生の実技の授業はかなり人気があるみたい。

 そんな日々を過ごしたおかげで、新魔道具の開発が捗った。


「きょ、今日は新しい魔道具を、お、お見せしますっ!」


『なんかモビルスーツみたいになってるけどw』

『クッソかっこよくて草』

『魔道具とは(哲学』


 ライブ配信でお披露目した魔道具は全部で四つ。

 一つは足に装着したブーツは、伝達した力を約2.5倍に引き上げて出力する。

 肩から胴体にかけて装着したアーマーのバッグにはブースターを取り付けた。

 アームに取り付けたのはフレアライフル二丁。

 合計四つの魔道具で、これはぼっちスーツ試作型と名前をつけてみた。

 

「これ、どういう仕組みかというとですね……」


『あーうん! わかった!』

『要するにすごいってことだねw』

『はよ殲滅タイム』


 説明させてよぉ!

 これ一応、魔道具製作チャンネルだからね!?


「これはですね、す、すごく難しいんです……。だからトレーニングをいっぱいしました」


『トレーニング!?』

『いや、必要だろ。ザコ相手ならいいけどB級くらいのモンスターなら魔道具頼りは危ない』

『S級を消してましたが?』

『ぼっちちゃんって運動苦手そう』

『走ったらすぐ脇腹痛くなって休んでそう』

『マラソン大会で途中から歩いてそう』

『筋トレ始めたはいいけど二日くらいで止めてそう』


 ひどい言われよう!

 確かに体力もあまりないし苦手だったけど、ナルさんと魔王先生のおかげでなんとかなりそうなんだよ!

 もうこうなったら実際に見せてわからせるしかないかな。

 今日は都心ダンジョンの一つ、ゴーレムダンジョン前に向かうことにした。

 電車を乗り継いで到着したそのダンジョンは名前の通り、ゴーレムだらけだ。

 硬いモンスターばかりで探索者によっては苦労する中堅ダンジョンみたい。

 でもゴーレムは多くが単調な動きだから、このぼっちスーツ試作型を試すにはもってこいかなと思った。

 何よりこのダンジョンの報酬や宝は鉱石が多いみたい。

 そう聞くと、居ても立っても居られない。

 今の私は十分に戦えるんだから。


「じゃあ、い、いきまぁーす!」


『バーニアふかして突撃したw』

『あれどうやって動いてるんだ?』

『ぼっちちゃんは初めから人間じゃなかった。いいね?』

『メカ少女は俺の性癖にぶっ刺さってる』


 どうやって動いてるか説明しようとしたよね!?


「こ、これはですね。体内の微弱な魔力と連動して、魔道具に伝達してるんです……。よく脳波だとか精神波って言いますけど、あれは実は魔力のことだって最近の研究でも明らかになりましたよね。そうなんです、今は魔力と言い換えてますがほんの二十年前までは精神波なんて呼ばれていたんです。精神波はほとんどの人が感知できませんが、たまにそれがとても強い人がいるんです。あ、でも普通の人でも感じることってあるんですよね。よく圧倒されたとか圧を感じるとか視線を感じるなんて言いますよね? あれって無意識のうちに魔力を感じているからなんです。視線に精神波、つまり魔力が……はっ!?」


『殲滅はよ』

『ぼっちちゃんの興奮顔スクショしたわ』

『ぼっちちゃん「私にも敵が見える!」』


 そうだよね! 誰も求めてないよね! ごめんなさい!

 さっそくストーンゴーレムが二体!

 

「い、いい、いきますよ……! トレーニングの成果、いきます!」


 ブーツでホバリングしつつ、ゴーレムの視界から逃げる!

 そしてフレアライフル発射!

 ストーンゴーレム二体の半身が消し飛んで崩れ落ちてくれた!


「や、やった! 硬くて、め、面倒と言われてるストーンゴーレムを討伐しました!」


『いや消滅は草』

『知ってたw』

『ホバリングかっけぇ!』

『二体はB級探索者でも苦戦するよな……』

『ゴーレムはクッソ堅いから強さ云々よりも消耗させられるのが厄介』

『ここはゴーレムをスルーしてダンジョンボス狙うギルドも多いw』


 あ、な、なんか、気持ちいいかも?

 ちゃんと動くか心配だったし、無理なら引き返そうと思っていた。

 だけど予想以上にスイスイ動く。

 それにトレーニングをしてなかったら、スーツの反動に耐えられなかった。

 頭から体、体からスーツにイメージ通りの動きが伝わらなかった。


「私、ちゃんと動くんです!」


『そりゃ動くわwww』

『ぼっちちゃんと動きたい』

『ぼっちちゃんファンクラブ会長:邪な電波を受信した('◇')ゞ』

『会長www』

『この人いっつもいるなww』


 ホントにね。切音さんといい、どういう生活してるんだろ?


「この階層はフロアボスがいないみたいなので……。ア、アイアンゴーレムが四体!?」


『四体はやばいってww』

『一体でもうんざりするのに…』

『俺の友達がアイアンゴーレム倒せなくて引退したわ』

『硬すぎて心折れるんよな。わかる』

『普通はスルーするよ。普通はね』


 アイアンゴーレムが殴りかかってきた!

 怖い怖い怖い! ホバリングで回避!

 そしてここからが魔王先生から教わった戦い方!


「こ、攻撃後の隙を狙います! フレアライフルッ!」


 フレアライフル二発でアイアンゴーレムの上半身を消し飛ばす!

 更に残り二体がまた殴りかかってくるけど、ここでバーニア全開!


『一気に速くなった!』

『ふぁ!?』

『加速もできるのか!』

『こんなん反則だろww』

『ていうか戦い方うまくね?』


「いきますっ! フレアライフリュッ!」


 噛んじゃった!?

 けどアイアンゴーレムには当たってくれた!

 残りの二体に直撃して確殺!


「よ、よしっ!」


『よしじゃないんだよなぁ』

『アイアンゴーレムはほぼスルー推奨モンスターだがw』

『死体?が溶けてるw』

『ライフルってダンジョンに持ち込めるの?』


 そうそう、ダンジョンに重火器はなぜか持ち込めないんだよね。

 でも私、法則やルールがわかっちゃった。

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