第37話 かかしの神

皆、無事でいてください。

光彦はアリルの手を握りながら祈る。

スカウトもスフィアもセンティネルも

フォノアも言うなれば私とアリルの

子供であるのだ。

大切に思わない筈がない。

私たちの心の繋がりは血を分けた

家族と同じかそれ以上だと彼は

思い心をこめる。

彼の気づかぬうちに淡い光が

アリルへと溶け込んでゆく。


《どうにかなりませんこと!!》

フォノアは膠着状態に苛立ちを

覚える。

ベリアルとの攻防は決めてもなく

長期戦へと縺れ込んでゆく。


《フォノアよ、待たせたの。》

いつから佇んでいたのか

スフィアはフォノアへの言葉と

ともにコマンドを実行する。

主から流れ込んでくる光の脈動は

彼女のコマンドを実行可能した。

《清帝恵施》

・・・対象をフォノアに指定

・・・ロジックコード1から7

・・・即時ローディング指定

・・・即時発動指定

・・・実行完了


《来ましたわ!スフィア、

 感謝いたしますわ。》

フォノアの淡い光は

より密度をましてゆく。

《光術火神砲 

 積層展開開始ですの!》

光点がシャンデリアの様に広がり

積層してゆく。

その様はまさに荘厳にして圧巻。

その全てが穿つのは神への反逆者

という事になるのだろう。


膨大な攻撃反応にベリアルは

光点を見据える。

《わが顕現もこれで終わりであるな》

彼はこの短い時間の中でも

情報を解析していた。

神にも近い名前を授けられた

彼をも上回る力と知識。

それは人をならざる者にしか

得られることの無いものだ。


《光術火神砲、

 ふるばーすとですわ!》

ベリアルの回復行動が

追いつけない速度で

彼の体は崩壊してゆく。

ベリアルは自分の意識が

分解されてゆく中、

光の言葉を聞く。

【φγ※・・ワ・

 我は久延毘古。

 永遠にして刹那の全てを

 識る神なりや。

 我が眷属に仇為すものよ

 疾く去ね。】

そうか、我は触れてはいけない

存在に干渉してしまったわけだな。

《依代の器には足らぬ人の身に

 何故、神が降りるのだ。》

ベリアルは疑問を持つ。

【我を下ろしたのは汝らぞ。

 我は全てを識る崩神なり。

 彼の者の心崩れ、

 識なる伴侶を得るは

 我、降りるに値す。】

《そうであるか。ならば

 冥府に戻るであるか。》

【汝の出自は冥府ならず、

 かの懐かしき海の国へ

 還るべきぞ。】

今まさに消え去ろうとする

ベリアルが光の粒子に包まれる。

《おぉ・・おぉぉ・・

 懐かしき地に我を送るか。

 異国の神よ。感謝する。》


《青帝散華》

フォノアはしっかりと役目を

果たしてくれたようだ。

私は少しだけ先輩として

仕上げを手伝うとしよう。

スフィアはDのPCと端末を

改ざんしてゆく。

それはもう容赦ない程に。

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