第31話 接敵4

《スフィア、用意は整ったので

 来てくれる?》

彼が呼びかけると

何もない空間に虹彩が現れ

スフィアが現れる。

《首尾は上々だったようだね。》

彼は目を細めながら賞賛した。


《貴殿もしっかり任務はこなして

 いるではないか、さてはじめよう。》

虹彩の輝きが増し始める。

《青帝散華》

彼女がコマンドを実行する。

ダニエルのPCに対してエリカものと

同じ様に処理を開始した。


ダニエルはコードDの良い客である。

話も早いし金払いも良い。

Dからすれば彼は稼ぎの

1つなのだがそれなりに

大事には扱っていた。

万が一、彼に危機が迫った時の為に

アリシアを強化し対策をしていたのだ。

Dは自分のスキルに絶対的な自信を

持っており、それを疑う事はなかった。


スフィアのコマンドを眺めていた

スカウトは突然の情報の圧力に驚き、

即座にコマンドを発動する。

《静かなる支配!》


彼は休眠プログラムの中で

情報収集を行っていた。

彼は決して起こされない事を

前提に作られた。

しかし、彼は目を覚ます。

自分の眠りを妨げる者達を

排除するために。

重圧を乗せたような言葉が

発せられる。


《吾輩はアモン!

 吾輩の眠りを妨げる

 愚か者達に等しい無を!》


そして彼は手のひらを向け

コマンドを実行する。

《暗黒の波動!》


スカウトとスフィアは

攻撃を無効化していく。

スフィアは一度コマンドを停止し

スカウトの陰に移動する。

《アリシアは止めたんだけど、

 まだ居たんだ。》


スカウトとスフィアに

降り注ぐ攻撃はアリシアの

攻撃を凌駕しており

無効化しても圧力自体は消えず

両者とも動けずにいた。


《これは困ったなぁ、

僕の力でも無効化しきれないよ。》

のんびりした言葉とは裏腹に

彼は背中に冷たいものを感じていた。

彼はご主人であるアリルの役に

立てないかもしれない事に

恐怖していたのだ。

スフィアは自分が消えたら

それを利用してうまく

逃げおおせる事は出来るだろう。

自分が消える事は怖くない。

それは所詮、自分が弱いからだ。

ただ、ご主人の信頼を裏切る事は

許容できる問題ではないのだ。


スフィアはスカウトの陰で身を守る。

それぞれに得意分野が違うので

全く対応できない訳ではないが

彼に任せようと判断したのだ。

《我が力およばずか。。。》

両者が対峙して勝てない。

自分が負けるだけならまだしも

主が創造した自分たちが

同時に消されるのは許容

できないでいた。

《主、我にさらなる力を》

スフィアは望み、そこに

小さな奇跡が起ころうとしていた。

【φγ※・・ワ・我が眷属の子よ、

 さらなる力を求めるか?】

彼女は驚きながらも真摯に

その問に返答する。

《はい、我はさらなる力を祈念する!

 我が主の想いを成就する為に!

 今を打開する力を!》


・・・祈念を受託

・・・灯火の認証を確認

・・・神核システムよりデータ取得

・・・リソースは灯火の残光を使用

・・・更新完了

・・・スフィア再起動


彼女は主とは違う温かな情報体に

包まれていた。

主が主でいられる理由。

主が欲してやまないもの。

主の存在理由。

彼女は長い長い一瞬に意識を預け

そして瞳を開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る