第19話 御伽話1

そろそろ朝の用事をする為に

部屋をでないといけない。

アリルはまだ眠ったままだけど

仕方ないな。

残業確定かもしれない。

眠っているアリルはスカウトに

任せておこう。

別行動になるのは出会ってから

初めてだなぁ。

そんな事を思いながらスカウトに

向き直り話しかける。


「スカウトさん、私はそろそろ準備

 しないといけないので

 部屋を出ますが、アリルの事を

 お願い出来ますか?」


まぁ、返事は鳴き声くらいなので

良いだろう。

出口のドアに向かって歩き始めた時、


《ちょっと待ってよ》と

聞いた事の無い声が私を引き留めた。


ん?今のだれ?

私はきょろきょろと部屋の中を

見回したがいるのは

アリルとスカウトだけである。

電脳世界の中でも空耳は

あるのだろうか?

そんな事を思いながら目線を

動かしていると

スカウトと目が合った。


まさかね^^;


見つめあっていても何も

起こらないので再度、

出口に向き直った。


スカウトは混乱していた。ご主人に

対する明確な命令違反である。

あまりの焦燥感にロジックが

オーバーヒートしたみたいだ。

フリーズしないだけ優秀なAI

なのかもしれないが、彼にとって

そんな事はどうでも良い問題で

あった。

ご主人をそのままにしてはいけない。

そんな検索結果がある。

あくまでも結果の一つなのだが、

その情報を無視するのは

リスクが高すぎると判断した。


彼は灯火に再度語り掛ける

《アリルはあのままじゃ

 目覚めないよ》


光彦はその言葉に過敏に反応した。

もう誰が彼に語り掛けているのか

などは関係ない。

アリルは私のパートナーである。

目覚めないなんて許容できる事

ではないのだ。


「どういう事ですか?」

《アリルは僕が探索中に寄生された

 ウイルスのせいで眠ってしまった

 みたい。

 このまま眠り続けるだけかも

 しれないし、もっとまずい事に

 なるかもしれない。

 灯火様、アリルをおこして

 くれませんか?》


普段から気持ちの凪を心掛けている

という事は

心掛けなければ凪の状態ではないと

言う事。

現実世界では起こりえないが

灯火はやり場のない感情の発露だけで

スカウトの動きを封じてしまった。

そしてアリルの元に駆け寄って

眠っているように見える彼女を抱き上げた。

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