第16話 道程

日々、口座に振り込まれて

ゆく金額は普通に暮らしていれば

まず入ってこないだろう。

これがいつまで続くかわからないが

続ける為にはどうして必要なもの。

昨夜も予定通り、振込が有った。

そう言えば、入金連絡はあるが

新しい投資方法の話も

最近していない。

彼女に相談した方が良いだろうか。

「何か新しい投資方法の

 提案はある?」

彼女はいつもの様に答えてくれる。

『はい。新しい投資方法には以下の

方法があります。1つ目は・・』

しかし、いつもはこの回答で終わる

筈なのに今日は

もう一行追加されていた。

『スカウトCが補足された可能性が

あります。ご注意ください。』

これは珍しいな。

彼はスマホを取り上げるとどこかに

コールし始めた。


アリルは灯火の社内情報を確認し、

注意人物に優先度マーカーを

つけてゆく。

この作業を続けてからそれなりの

情報と相関図が完成しているが

今は資料作り以外それほど

役に立つことは無い。

しかしこの先、灯火に何かあった

場合に対処できる方法を増やす為、

彼女は今日もデータを蓄積してゆく。


スカウトは彼女の情報を集め続ける。

彼女自身の行動パターンや交友関係、趣味嗜好、

そして彼女の雇い主のアドレスまで

到達していた。

彼は探索役の機能しか与えられて

いない。

形跡を残さないために自立AIの

容量もかなり小さくなっている。

いわゆる特化型でいかなる

攻撃方法も方法も持っていない。

それゆえに彼は今日も隠密活動に

集中するのであった。


灯火は一日の予定を終え、

電車に揺られながら

定時で帰宅できる幸せを

今日も感じていた。

いつものルーティンが終われば

アリルの部屋でゆっくりして

いたいのだ。

アリルのお陰で精神的なゆとりは

生まれているけれど、

深く刺さった傷というものは

そんなに簡単に癒えないだろう。

駅前のスーパーで食材を揃え帰宅。

いつものルーティンの後は

アリルの部屋へ入った時、

『灯火、おかえりなさい。

 実はスカウトが捕捉された様

 なのです。』

捕捉?何それ、何やってたの?

彼女の言葉に戸惑うのであった。

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