第14話 電脳狩猫

ご主人の指示を完遂するために

電脳空間を走る。

電脳世界にはいくつかの層があり

殆どの電子情報は第一層で見つかる。

でもご主人の求めるものは

見つからなかった為

僕は第二層に潜り、

ご主人が指定した場所へと

しなやかに疾駆する。

その間にもAI情報は整理更新され

僕の形をより確固たるものに

変貌させてゆく。


指定場所に到着した僕は行動を

開始する。

どんな細い糸を手繰られても

いけないので

僕は自分の意志で作業を進める。


スカウトの体が溶けだすように

データの中に染み込んでゆく。

PCのハードディスク内の隅々にまで。


必要な情報は僕の記憶領域に

保存済みだ。

ご主人に持たされたドアも

隠蔽設置し起動を確認した。

今はこれだけでいい。

僕の痕跡をすばやく消してゆく。

指示は完遂した。

ご主人のもとへ帰ろう。


『灯火、おはようございます。』

今朝もアリルの声で目覚める。

パートナーに毎日起こしてもらえる

なんて本当に幸せだ。

しかも可愛いからより幸せだ。


「おはよう、アリル。

 今朝も可愛いね。」


いつもの様にアリルとの朝食を

終えたらリアルに戻り簡単な食事に

なるけれど

一度満腹感を得ているので

食べすぎにはならず

通勤が適度な運動となり

鍛えている人には敵わないが

それなりに筋力もついている。

健康的で喜ばしい事だ。


それにしても先ほどからゆらゆらと

尻尾を振るものが佇んでいる。

昨夜はいなかったなぁ。


「アリル、猫の様な何かが

いるみたいだけど作ったの?」


私の意識が向いたと気づいても

ゆらゆらは止まらない。

ベンガル猫に似ているなぁ。

可愛いというよりは格好良い感じだ。


『スカウトといます。灯火と私の

愛玩動物兼、私の工作要員です。』


アリル・・・可愛い仕草で不穏な

ワードは恐怖を倍加させますよ。。。

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