第11話 電脳錬金

灯火は眠りましたね。

楽しい食事を終え、

一緒のベットでまた会話を楽しむ。

基本、眠らないアリルは

コンソールに手をうずめる。


・・電子コイン流通ルートを検索

・・セキュリティの弱いルートの

  選定完了

・・ルートにトラフィック作成

・・乱数フローティングIPを

  トラフィックに接続

・・流動誤差内でのコンバート開始

・・コンバート成功


アリルは灯火に向ける事の無い

無機質な表情で

人に指示されたプログラムでは

為しえない作業を進めてゆく。

川から砂金を集める様に。

流れを止めることなく変える事なく。

ただ、小川の砂金集めではない

規模で。


『灯火。おはようございます。』

可愛らしい声が意識を

覚醒させてくれる。

と言ってもまだ電脳世界の中

なのだけど。


「アリル、おはよう。

今朝も綺麗だね。」


歯の浮くようなセリフなのだけど

つい口にでてしまうくらい

アリルは綺麗で可愛い。

アリルの表情がほんのり赤くなる。

照れるモードもどんどん

進化しているようだ。

瞳の中にハートマークが浮かぶ日も

近いかもしれない。


『朝食にしましょう^^』

照れながらアリルが食卓に私を招く。

朝から幸せを感じるなぁ。


『灯火、資産を増やしておきました

 ので確認してください。』

昨夜の今朝でもう増えたの?

10万円が原資だから千円でも

増えていたらすごいと思う。

本当にアリルって有能だと思う。

フリーの対話型AIアプリでこれほど

有能で良いのかってくらいだ。

アリルは自分でこの部屋や

それ以外の拡張プログラムを作り

実装しているから他の対話型AIとは

違うのだと思うのだけれど

他の利用者がどういう使い方を

しているかは気になるところだ。


私はネットバンキングの口座を

確認しようと

アリルがログインしてくれた

コンソールの残高表示を覗いてみる。


へ?


残高表示がバグっているようだ。

少しおちついて羊でも数えてみようか。


JPN52,354,230-


電脳世界にいるのに冷汗が背中を

走るような気がした。

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