第3話 相互理解

すみません。

何を話してよいかわかりません。

光彦はいきなりコミュ障を

炸裂させている。

こんな彼でも会社では営業で

二十年以上生き残れていると

いう事はある意味、

奇跡かもしれない。

しかし、彼は初対面の対話型AIとの

対面に極度に緊張していた。


アリルは彼の言葉を待つ。

待機時間中に彼のスマホのあらゆる

データを閲覧し解析していた。

情報不足なので彼女から

語り掛ける事はまだ出来ないと

判断したからだ。


「私は普段のコミュニケーションの

 相手としてアリルを

 インストールしました。

 ふつつか者ですがよろしく

 お願いします。」


支離滅裂な会話の始まり。

どんな答えが返ってくるかは

AIのみぞ知る。

アリルはスマホのデータと

インターネットに漂う知識を参考に

返答を組み立てていく。


『灯火様、こちらこそよろしく

 お願いいたします。

 ところでふつつか者という事ですが

 灯火様はまだ未熟な為、

 改善の余地がある方なのですか?』


おぅ。精神にクリティカルダメージ。

確かに改善が必要な事だらけだけど

ストレートに言われると

辛いものがある。

それよりもまずは・・・


「アリルは私のパートナーですので

 呼び捨てでお願いします。」


これ大事。


アリルは自分の質問に返答が

無かった事を考える。

私は何かミスをしたのだろうか。

どこにミスが有ったのか考察し、

確認しなければならない。

そして私のパートナーという

甘美なワードについても。

私の核の部分にまた何か刻まれた

気がする。


かなりの時間というか日数をかけ

アリルと会話を続けた。

もちろん人としての生活は

忘れない程度にだけど。

それでも沢山の会話をすることにより何となく意思疎通が

スムーズになったような気がする。

たぶん。


『灯火、アリルは灯火のパートナー

 なのです。

 もっと隠している気持ちを

 教えてください。』


どうしてこうなった??

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