青空の彼女

haru

第1話 告白

「やっぱり可愛いな」

「おい、俺にも見せろよ」

「先輩かっこいいです!!」


 大勢の生徒が体育館の入り口に集まり、たった一人の彼女だけを見ている。彼らが誰を目当てに、そして誰を見に来ているかは、体育館あるいはその周辺にいる生徒たちでさえもわかるほどの人気な人物だ。


 俺、なが るいは特に何の取り柄もないただの高校1年生だ。特にモテるわけでもなく、未だに彼女が出来たこともない。そんな俺に何か一つだけ取り柄があるとするならば、小学生からしているバレーが他の人より少し上手いことくらいだ。そんな冴えない俺にも気になる人くらいはいる。その人は、綺麗な二重を持ち、ハッキリとした鼻、そして少し明るい色のサラサラな髪を持ち、髪型は俺の好みであるボブだ。そして、その人物は今、隣のコートでバスケをしている。そう、入り口に集まっている全ての生徒たちの視線の先にいる彼女だ。彼女の名前はかみ めいと言って、俺の一つ上の高校二年生だ。彼女は男女関係なく人気で、勉強、運動も優秀で、まさに文武両道を成し遂げてる人物だ。明らかに彼女と平凡な俺とでは生きている世界が違いすぎていて、彼女と付き合うなんて釣り合わなすぎるということくらいは、分かっている。ただ、俺も思春期の男子高校生だ。可愛い彼女くらいだって欲しい。俺が所属する男子バレー部は、明さんがいる女子バスケット部とコートが隣になることが多く、よく明さんのことを目にしていた。そんな彼女を俺は、あることをきっかけに彼女のことが気になるようになっていった。あくまでも明さんのことは気になっているだけで、正直明さんと話す機会が少なすぎて、明さんがどういう人なのかをまだあまり知らなかったため、好きという気持ちまではいっていなかった。でも、恋愛は直感とタイミングが大事なため、好きになるのは付き合ってからでもいいやという思いで、俺は今日告白することを決意した。僅かな可能性を信じて、俺は勇気を出した。


 〜翌日〜

「まあ、そんなにへこむなって」

 俺に声をかけてきたのは、中学からの友達のかいだ。

 俺はあの後、意を決して明さんに告白をした。彼女の返事は、

「部活に集中したいから、恋愛をする気はないかな、ごめんね」

 酷だ。これから俺がどう想いを伝えていったって、部活がある以上彼女とは付き合えない。

 まあ、ダメ元で告白したのもあるし、まだ好きという気持ちではなかったため、振られてもそこまでダメージはないだろうと思っていたが、俺の予想は間違っていたらしい。俺はかなりのダメージを負ってしまった。

「あの人、今年入って何人から告白されたんだろう笑」

 高校からの友達のゆうが言う。

「あの明先輩と付き合える人とか、この学校に居んのかよ笑」

 高校からの友達のひろの言葉が俺のボロボロになった心に針を刺した。

「そうだよな、やっぱり無理だよな〜」

 もしかしたらという思いで、告白してみたけど、冷静に考えてみたら、あの明さんだ。今更、自分の行動の恥ずかしさに気づき、後悔をする累。

「今日の隣、どこの部活?」

「今日も女バスだな」

 同じ部活のじょうが答える。

「うわ、気まずっ。今日はまじで明さんと会いたくないわ」

「サボってみんなでカラオケいくか?」

「うん、行こっ」

 俺はこの思いをかき消すかのように部活にサボってカラオケに行った。


 〜数時間後〜

「はー、学校行きたくねーっ。喉痛いし」

「お前は歌いすぎなんだよ笑」

 結局、カラオケでは嫌な思い出を吹き飛ばすかのように、大熱唱をした。

「じゃあ、俺こっちだから」

 俺は四人と別れて、一人で家に帰った。しばらく歩いていると、ポケットからスマホがなる音がした。スマホを取り出して、見てみるとメールが一通来ていた。

ー 今日は早く帰ってこいよ〜 ー 父

「今日なんかあったかいな」

 俺は父からのメールを見て少し疑問に思いながら、家へと帰る。

 家の前に着くと駐車場には、見知らぬ車が止まっていた。うちは父子家庭なため、父の知り合いの誰かが来ているのだろうと思い、俺は玄関に入る。

「ただいまー」

「おかえりなさいー」

 ん?女性の声?

 知らない人の声がして、しかも女性の声だったためかなり驚いた。不安と疑問を抱きつつ、おそるおそるリビングに入ってみる。すると、テーブルに父と俺と同い年くらいの女子校生とその母親?がいた。状況が全く理解できない、そう思いながら父からの言葉を待つ。

「累、紹介するよ。まささんとあきちゃんだ。父さん再婚するから、今日からこの二人は家族になる人たちだよ」

 急すぎて、俺は唖然とした。

「急すぎない?」

 俺は驚いて戸惑いながらも答えた。

「ちょっとサプライズをしてみたかったんだが、、やっぱり事前に言っといた方が良かったか」

 父が答える。父が少し不安そうな顔になったのを見て、俺はすぐに言った。

「ちょっと急すぎて、びっくりしたけど、父さんが幸せならそれでいいよ笑」

 それは本心からの言葉だ。俺が幼少期の頃に母を交通事故で亡くし、男手1つで育ててくれた父には、とても感謝をしている。だから、父には本当に幸せになって欲しいと思っている。それを聞いた父は、安心したような顔になっていた。

 父が幸せになることは嬉しいことなのだが、俺には1つ不安な事があった。それは再婚相手の子供の秋という人物だ。俺は彼女をよく知っている。なぜなら、彼女は俺ら1年生の中で学年のマドンナと言われている人物だからだ。あの、学校のマドンナと言われている2年の明さんの次に人気があると言っても過言では無い人物だ。そんな彼女がこの場にいるということは、これから彼女と俺は家族になるということだ。なんとも信じられないことが起きたため、俺はかなりの不安を感じていた。

「は、初めまして。る、累といいます。」

 驚きと焦りで噛み噛みの挨拶をしてしまった。すると、秋は俺を見て、

「よろしく」

 とだけ言って、そのまま黙ってしまった。

 え?塩すぎないか?俺はなにか気に触るようなことをしてしまったのか。

 俺が動揺を隠せていない様子を見た政子さんは

「この子人見知りなのよ。あんまり気にしないでね。」

 と教えてくれた。あー、人見知りなのか。学校では、まったくそんなふうには見えなかったけど。俺がそう思っていると父が、

「そういや、秋ちゃんと累は同じ学年だけど累の方が誕生日早いから、お前がお兄ちゃんだぞ」

 と言った。なら、俺に妹が出来たということか。俺の妹があのがわ あきとは、なんとも漫画みたいな展開だ。俺はこれからの生活に対して、尋常ではない不安を感じていた。

 続く

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