赤い彗星

小烏 つむぎ

赤い彗星

 それは気恥ずかしい青春時代を彷彿とさせるほど、暑い日のことであった。


 私と長年の友は銀色に流れる川の上流で釣りをしいた。雲間から現れた巨大な太陽が川面に光を放って水面はギラギラと七色に輝き、偏光グラス無しには何も見えない。私は帽子に引っ掛けていた偏光グラスを装着した。


「見えるぞ、私にもテキが見える。」


 グラス越しに見る水面下にはいくつもの影があった。友が新しくあつらえたという釣竿を自慢げに見せる。試作品らしくモニターを頼まれたらしい。私にもどうだと勧めるが、私には私のダイーワがある。


「なるほど。

見せてもらおうか、シマーノの新商品の性能とやらを。

だが、釣り具の性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる。」


 川面でユラユラとしていた私の浮きがフィと沈み竿がグッとしなる。

まだだ。

焦るな!

竿のしなり、糸を引く力を量ってしっかりかかるのを待つ。

再度手応えがあった。


 いまだ!


私は竿をしっかり支え、急いで糸を巻き取った。水面下に魚影が見える。左右に逃げまどうその影を目で追いつつ網を手探りに探す。大きな水音がして、ビームライフルのような水しぶきがこちらに向かう。友が大きな声で「危ない」と叫ぶが、


 「当たらなければどうという事はない。」


 魚は賢い。タイミングを間違えると簡単に逃げられてしまう。そして当分はエサに食いつかない。慎重に、しかし俊敏に。


 竿を持つ左手にあの独特な感触が来た!

いまだ!


 水面ギリギリに浮上した影を網で手早く掬う。ソレは網を破る勢いで暴れた。網はこれくらいで破れるような代物ではないが、しっかり押さえていなくては逃げられてしまうだろう。

 

 今回も本当に生きがいい。

やはりこうでなくては。


 私は私のイメージカラーの真っ赤なクーラーボックスの蓋を開け、アイスの上に釣った魚をそっと置いた。そこにはすでに七尾のヤマメが横たわっている。


 その時全く釣果のない友がもう少し上流に行こうと言い出した。しかし私は、まだこの場所がいい。彼に合図の笛を渡して、先に行かせることにした。


 「チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ。」


 しかし、その後なぜか急にアタリが無くなった。


 「ふっ。私もよくよく運のない男だな。

実戦というのは、ドラマのように格好の良いものではない、か。

いや、戦いとはいつも二手三手先を考えて行うものだ。」


 しかし釣り糸を投げる位置を変えても思ったような反応はない。しばらく粘ってみたが、どうもこれ以上は無理のようだった。


 「認めたくないものだな。

自分自身の、若さゆえの過ちというものを。

先ほど、ヤツと一緒に移動すべきだったのか。」


 私は私の赤いクーラーボックスと道具を持って、友のいる上流に移動した。途中で笛を吹く。少し先の方から友の笛が応えた。

友は川が蛇行し岩の多い場所で釣糸を垂らしていた。

「来たか」と手を振って、ここに来いと誘う。


川岸にヤツの道具が置いてある。ブラウンとグリーンの二色に塗られたヤツのクーラーボックスの中を覗いて驚いた。彼のクーラーボックスの氷の上には、山のようなヤマメが!


 「ええぃ! シマーノの釣り棹は化け物か!」

「なあ、いい場所だろ。

オマエもこっちでれよ。」

「ああ、ありがとう。

勝利の栄光を、君に!」

「なんだ、大げさだな。」


 それから半日ほど川に浸かっていたが、その後はたいした釣果もないまま終わった。私は私のクーラーボックスのヤマメをみんな友に渡した。彼はこの後、姉のところに行くのだ。彼の家族は私と違って大変多い。ヤマメはいくらあってもいいだろう。


 「友よ、私の手向けだ。姉と仲良く食べるがいい。」

「すまんな。

何でこんなによくしてくれるんだ?」


 「君が、坊やだからさ。」


 私はクーラーボックスの蓋を静かに締めた。クーラーボックスに貼った赤い彗星ザクのシールが夕日の光で燃えるようだった。


**********************************


お詫び

 まずは、すみません。

わかる方にしか伝わらないとは思いますが、とあるアニメのキャラクターの台詞を繋げて作品にしてみました。

あちこち綻びもあますが、ワタクシの未熟ゆえです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 


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