第29話

元夫の池谷

「あれから、中東の石油取引のビジネスでイランに行ってたんだ。そこで、大きな取引の契約が取れたんだけど、内政が急に悪化してクーデターが起こって、石油取引が契約の5割しか出来ずに大赤字。親会社から呼び出しを食らって1週間前に帰国したんだ。

プライベートでも彼女にね………。」


黒川

「そうかい、それは大変だったねえ。

あの時の女……名前を江梨子さんって言ったかしらね? 上手く行ってないの?」


水野

「『あの時の女』? それは、もしかして浮気ですか?」


池谷

「ちょっと横からチャチャ入れないでくださいよ。江梨子とはタエコさんと別れてから知り合った女性ですから。

それで、話を戻すけど、江梨子は最初からカネ目当てでね、私のカネが乏しくなると、トットト他の金持ちの男に乗り換えたって訳だよ、海外生活にも馴染めなかったんだろ、先に日本に帰国して……そりゃあ日本が住みやすいからね。」


黒川

「そうかい、その辺の状況は分かったんだけど、何か困った事があるのかい?」


池谷

「いや………大丈夫だよ、何も困った事なんて無いし………。ちょっと里心が出たって処だよ。君の顔がちょっと見たかっただけさ。それに用心棒が居たんじゃ、浮いた話も出来ないしね。」


水野は未だに池谷の事を訝(いぶか)しげに見ていて、用心棒の役目に徹しているようだ。


黒川

「昭吾君、私の所へ来たって事は………何か相談したい事が有ったんじゃないか? 君とも短い間だったが縁有って一緒になったんだ、もう少し詳しく聞かせてくれないか?」


黒川社長は池谷昭吾の話を数時間聞いてやった。用心棒の水野の視線を感じながらでは有るが。


池谷

「……………それで、その後に高山博子という女性に出会って、海外投資を勧められているんだよ。投資には大きなリスクも有るから、見識の広いタエコさんに意見を聞きたくてさ。」


黒川

「今、高山って言ったよね………人違いかもしれないんだけど、コチラの事業展開を邪魔する組織で高山商会っていうのが有ってさ、同じ組織の人じゃ無ければ良いんだけどね。まあ、世界は広いから別人だとは思うんだけど。」


池谷

「そうかあ、まあ警戒するに越した事は無いよね、投資金額も数千万数億になるし、会社のカネだし、失敗は許されないからね。」


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