第2話 片田舎から追放?

翌朝、セリーナが朝食を作っていると、扉を叩く音がする。セリーナが扉を開けると、村人達が家を囲んでいる

「何か御用ですか?」

セリーナが男達を見て驚いたように聞く

「あいつをすぐに出せ!!」

男が怒鳴り、声を聞いたアーレルが出てくる

「村を追放する!! 村に必要ないお前をこの村に置いておけない!! すぐに出ていけ!! これは村長としての命令だ!!」

「出て行けと? 追放? 村長にその権限は無いですが」

「黙れ!! 村長に口答えは許さん!! 前から気に入らなかったのだから!! さっさと出ていけ」

男が怒鳴ると、村人達が口々に怒鳴っている


「どうして、御父様に出ていけと!! 村に近付く魔物を倒しているのは、御父様です! 御父様が居なくなったら、この村は誰が守るのですか?」

セリーナが慌てて言う

「は? 魔物が村を襲う? この10年一度も無いだろう!! それも良い農地を独り占めする為の嘘は止めろ!!」

男が笑いながら言うと、セリーナが言い返そうとする

「セリーナ、止めなさい! 何を言っても無駄だろう…旅立つのが早くなっただけだろ」

アーレルがセリーナを見て言うと、セリーナがアーレルを見ている

(御父様がその気なら、こんな奴ら全員簡単に叩き潰せるのに!!)

「そうだ! セリーナ、お前だけは家で家政婦をさせてやる! 光栄だろ? 息子もお前の事が気に入っている」

男が笑みを浮かべている

「は? 御父様から離れません! その臭い口は2度と開けないで下さい」

セリーナが睨みながら言うと、村人達が驚いている

「この小娘が!! その口2度と聞けない様にしてやる」

男が怒り怒鳴るとセリーナ目掛けて殴ろうとすると、アーレルが腕を掴み止めている

「いい加減にしろ!! 娘に手出しをしようとして許す気も無くなった!」

アーレルが怒りに睨んでいる

「くそー離せ!! お前達こいつを叩き潰せ!!」

男が怒鳴ると村人達が顔を見合わせている

「言う通り出て行くが、この村がどうなろうとも、手助けはしない! 良いな!!」

アーレルが睨みながら言うと、村人達を見ている

「お前こそ2度とこの村に近付くなよ!!」

男が怒鳴ると、アーレルが男を村人達の方に投げ飛ばすと、村人達が驚いたようにアーレルを見ている

「明日までに出ていく! 邪魔だから帰ってくれ! 邪魔するなら容赦しない!! 解ったらそいつを連れて去れ!!」

アーレルが睨みながら言うと、村人達が慌てて去っていく


「御父様、どうしますか? 荷物もまとめないと…」

セリーナが不安そうに言う

「町まで行って、冒険者登録をするしかないか…荷物は昨日の内にある程度まとめているから、朝食を食べながら話そう」

アーレルが村人達が去ったのを見てから言う


朝食を食べ終わると、セリーナが倉庫を見て驚いている

「ポーションが無くなっています」

「この鞄に仕舞ってある…2人の内緒だぞ」

アーレルが魔法の鞄の事を話していると、セリーナが中を覗いている

「何も無いのに? 御父様だけが使えるのですか?」

「そうだ…いつかセリーナ用の鞄も用意しないとな…冒険者になっても、セリーナは後衛職だから、無理はしないでほしい」

アーレルが考えながら、セリーナに話している

「御父様から離れません」

セリーナが笑顔で言うと、アーレルに抱き付いている

「セリーナ、人前で抱き付くなよ」

「大好きな御父様だから」

セリーナが笑みを浮かべながら言うと、アーレルが困ったように苦笑いしている


荷物をまとめ終わると、アーレルとセリーナは、村の反対側の家に向かい、家の家具類の処分を頼む

「すまない…今まで村を守って貰っていたのに…戦える人が居なくなれば、この村も危ない事すら解らないなんて…」

男が頭を下げながら言う

「子供達も旅立ったから、セリーナとゆっくり生活の出来る場所を探すよ」

「子供達か…4組で18人も育てたのは凄いな…みんな元気にしているのか?」

「もし訪ねて来たら、この事を正確に伝えてほしい、驚かすつもりで帰ってくるからね」

アーレルが考えながら言う

「そうだな…帰ってきたら伝える事は約束する」

男が考えながら言うと、アーレルとセリーナが荷馬車に乗り込み村を後にする


アーレルとセリーナが出て行ったのを知った、村長はアーレルの家に向かい、扉を壊して中に入り部屋を見て回っている

「無い!! 倉庫に有った薬や何本か有った剣も!! 何も持って無かった筈!! 何故だ!!」

村長が焦り、部屋を隅々まで探している。村人達も集まり部屋を見て回り落胆している

「そんな…あんなに有った物を何処に隠した…この間貰っていた剣も槍も無いなんて…」

「村長、どうするのですか? いくらか分け前をくれると言っていましたが…何も無いですが…」

村人達が苦笑いして村長を見ている

「探せ!! あのポーションなら銀貨や金貨にもなる筈!! 何処かに隠して行った筈!! 見張って居た筈だろ!! どこに宝が有るんだ!! 早く探せーーーーー 俺の宝を!!」

村長が怒鳴り、村人達が家の周囲まで探している

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