第45話 セクシー女優救出!100階層へ!


 そのとき俺はキメラサキュバスの乳に飽きていた。


「リコの生乳を揉んでたからわかるが。偽乳だろこれよぉ!」


 ハンマーで吹き飛ばすと、サキュバスの皮が剥がれ、角を生やした灰色の肌の像顔の悪魔が『ぎへへへ』と現れた。


 80階層に蔓延っていたキメラサキュバスが本性を現し、メタモルデビルに変化する。


 悪魔顔の大群が俺を取り囲んでいた。


『魅了ガキカナイトハナ』

「キモっ!」


 雷轟で無数の悪魔共を塵に返して進む。


「オラオラオラァ」

『ギャンッ!』『ギャギャンッ!』


 配信が途絶えてしまったのが気になった。


「くそ。メルルが行っちまったから、スマホで配信するしかねーな」


 妖精メルルが自動配信してくれたものが、手動になってしまったので、俺は左手でスマホを取り出す。

 右腕にハンマー、左手にスマホで配信再開。


「お騒がせしました~。妖精が粗相したみたいっす。でもなんかリコを呼んでくるみたいっすね」



『リコチンくるの?』

『夫婦やん?』

『もう結婚しろ!』

『リコは俺のものだ! 鬼神殺す!』

『↑罪坂降臨』


 前回吹き飛ばした罪坂は、ネットミームと化していたようだった。


 リコと結婚したいと思っていてかつ俺を殺したいと息巻いている奴は『罪坂さん?』と呼ばれるようになったらしい。


 哀れなり。

 とはいえ、ほとんどのコメントをくれる人はいい人だ。


「コメントあざます! 100階まで行くんでよろです!」


 スマホを持っているので俺の片腕が塞がってしまうが、ハンマーをリビングハチェットに変更。

 オートで魔獣を抹殺してくれるので問題はない。


『ゲラゲラゲラゲラ!!』


 ひうんひうんひうんひうん、と立ちはだかるキメラサキュバスもとい、メタモルデビルを生きる鉈が飛び交い斬殺!


 俺がメタモルデビルの変身したサキュバスに魅了されるわけねーだろ。

 リコが来るまでもねーんだがなぁ。


「助け、て」


 そのとき、サキュバスめいた人が助けを求めていた。


 俺は手を止める。


 雷轟使いなためか、他人の生体電流で本物と偽物を区別できるのだ。

 この助けを呼ぶ人は、本物だ。


 というか、どこかでみたことがある。


「てめーは……。キメラサキュバスじゃねえ。ん。んー。もしかして! セクシー女優の神無月エンジュちゃん?」


「私のこと、覚えててくれたんですか!?」


 キメラサキュバスに紛れて、セクシー女優が紛れていたのだ。

 俺は頭を下げた。


「お世話になってます。息子共々」


 配信コメントも盛り上がってきた。


『エンジュちゃん?』

『国宝乳のエンジュちゃん?』

『国宝を救った男!』

『また女の子を救ってしまった』

『息子共々www』


 だが何故、生身の人間がこんなダンジョンタワーにいるんだ?

 しかも90階だ。


「ひぐ。うう……。ハニトラをしてこいって。屍田さんに言われて。ぐす。彼は人の血が大好きなんです。命を燃やし尽くすことが美しいと……」

「はぁ。意味分かんねー奴だな」


 ダンジョンをクリアしたらコネになるかと思ったが、屍田もまたブラック上司人間なのか?


「まただるくなったら吹き飛ばすしかねーのかなぁ」


 俺はつい漏らしてしまう。


『鬼神さんなら吹き飛ばしてもおk』

『迷宮だから許されるっしょ』

『良い噂聞かないなあ屍田は』

『エンジュちゃん救出したからヨシ』


 コメントの皆は温かかった。

 だが俺としては次の仕事に繋げたいので穏便に行きたいのだ。


「エンジュちゃん。左腕で君を抱っこするから。俺の代わりにスマホで配信しててくれないか?」

「は、はい!」


 エンジュちゃんをお姫様だっこしつつ、俺はさらに登っていく。

 エンジュちゃんはちゃんと配信もしてくれるようだ。


 さらに番組解説者がドローンカメラで鬼神を撮影!

 鬼神の配信と、番組のカメラの両面で、世界的に中継されていた。



『鬼神透龍! セクシー女優を救出しつつ独走態勢となったぁ! 参加者の中では上から二番目のおじさんです。にもかかわらず圧倒的な踏破力だぁ!美女と野獣か、下克上か!』


「リコとメルルを待つべきかとも思ったが、片腕が塞がっても楽勝か」

「すごいすごい。速い!」


 エンジュちゃんに褒められてやる気が出てくる。


 右腕のリビングハチェットがオートで殲滅してくれる。懐に入り込まれてもイーグルハチェットにすれば、腕が増えるほどの残像で剣戟を繰り出せる。



『90階。スカイフィッシュエリアだぁ! 人間が見えないスカイフィッシュに食われ』


「うるせえ!」


 俺はイーグルハチェットを振り回す。


 しゅあっ!

 

ばばばばっばばばっばばばば!

 

  ばばばっばばばばばばばば!


    ばばばばっっっばばばばばばば!


 ばばっばばっばばばばっばばば!



 90匹の見えないスカイフィッシュを撃破。

 そらとぶ魚達がどぼぉ、と地面に叩きつけられた。 

 

「芝刈りみてーなもんだぜ!」

「すさまじい。なんて人なの。なんて人に私は助けられちゃったの?」


 俺は少し考える。

 エンジュちゃんが屍田さんの女だったとしたら、これもNTRなのかな?


 いや、リコとは純愛だったはずだけど。罪坂から奪ったみたいになったし。


「まあいいか。人助けだからな」

 

 セクシー女優エンジュちゃんを抱えながら俺は100階の扉を開けた。




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