第17話 決断

祇園祭だ。

うちは彼氏いてもこんな状態やからたくやは誘えない。

みんなカップルで行くんやろうなー。いいなー。

浴衣姿の男女とすれ違う。

昨日、安否報告で明後日から夏休みになります、祇園祭だよって近況メールを入れた。

どうしたらいいか答えはでないまま。


たくやから電話がかかってくる。

「もしもし。あのさ、俺、今、京都駅に着いた」


「え?京都駅?…えー!?」


「俺、何時でも待つから、今日から3日間でどこか時間とれん?」


「今日会う!どうする?うち来る?

うち、今、学校の帰りで電車。

もうすぐ駅に着く」

急にたくやが来た。

やった!!久々に会える。

…いや、喜んでる場合じゃない。

ちゃんと別れようって言いに来たんかもしれんし…

駅でたくや来るの待って河川敷で話そうってことになった。


「急に来るからびっくりした」


「その方が会ってくれると思って…」


「来てくれるんなら会うよ!」


「俺、考えたんやけど、泣かしてばっかりやし、俺から離れた方がかおりは幸せになるんじゃないかと思ったら、やっぱ簡単には一緒にいたいって言えん」


「じゃあ、別れるってこと?」

隣のたくやの顔を覗き込む。

目にいっぱい涙が溜まってきてたくやが滲む。


たくやがぎゅーっと抱きしめる。

しばらくそのまま何も言わない。

もう涙が流れてしまってる。


肩持って離されて

「香川来るなら、一生一緒にいる事になるけど、かおりはほんまにそれでええん?」


「え?…別れるんじゃないの?

一生一緒にいてくれたら…死ぬほど嬉しいよ?

たくや、じゃあ、うち香川で就職してもいいってこと?」


「俺、一緒にいたいけど、それ言ってもいいん?

幸せにする自信とかないよ?

後で後悔しても遅いよ?」


「一緒にいたいならそれだけ言ってよ!!

幸せにしてもらおうなんて思ってないし。

今離れた方が後悔するし!

もう、決めたからね?うち香川行くから!!」


たくやはめちゃくちゃ笑顔で、またぎゅーって痛いくらい抱きしめてくれた。


ポツポツと雨が降り出した。

夕立。

2人で手を繋いで屋根のあるところまで避難。

屋根付きのベンチで止むまでお喋り。

学校の系列病院が2箇所あってそのどっちか選ぶ事など、事前に調べていて香川に行くって決めてから具体的に決めないといけない内容をたくやと相談。

香川ではうち一人暮らしデビュー?って思ってたら、何で?一緒に住もうよって。

2か3LDKの部屋を2人で探しに行こうって。

色んな話をしてたらあっという間に雨は上がっていた。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る