第3話 エステシャンは見た!

 女性は死ぬまで綺麗でいたいものです。中には女を捨てている人もいますけど、きっかけさえあれば不死鳥のように甦える生き物なのです。(恋をするとかね)

 施術では肌と肌が触れ合うので、嘘は通用しません。触った瞬間に相性が分かるのです。

 真摯に向き合う事が何より大切で、信頼関係なくしてはお客様を満足させる事などできません!

 私のサロンは個室を用意出来る程高額な料金を取らず、いつでも気軽に通える『お客様のメンテナンス工場』と言うコンセプトで営業してきました。カーテンで仕切っている為、隣の声は筒抜け状態。それでもそんな事を気にする人は来ないので、初めてのお客様もびっくりするくらい和気藹々のサロンなのです。

 時には焼肉弁当を買って来て施術後に食べている人がいて、サロン内に香ばしい良い匂いがしています。すると

『焼肉弁当美味しそうですね!私も終わったら食べたいなぁ』と施術されながらお喋りすると

『美味しいですよ!今○○で焼きたて売ってましたよ〜買って来てあげましょうか?』と。

『ありがとうございます。でも大丈夫!私も見に行きたいから』と言葉が飛び交っていたり。

 またある時は、私が施術をしているとドドドが足音がしてカーテン越しに

『先生、ちょっと荷物置いて置くからね。今度取りに来るまでよろしく』と声がする。

 寝ていたお客様はびっくりして

『常連の方ですか?』

『あぁ、そうなんですよ。買い物が重いと一時的に預かってます』

『お客様と仲が良いんですね』と感心されました。

『うちは地域密着型なんで。いつでも気軽に立ち寄れる場所でありたいと思ってますからね。だから何もなくても顔を出して話していく人がいたり、賑やかなんですよ〜』

『へえ〜、良いですね!』

『それで、暇そうだからお手入れして行こうかな?なんて予約入れてくれるの。今の世の中一人暮らしで寂しい時もあるでしょう?誰かに相談したい時や、気兼ねなく愚痴がこぼせる場所って必要なんですよ』

『確かにそうですね』

お客様の中には内に秘めていた悩みやストレスを話しているうちに、自然に涙してしまう人もいます。美容って外側だけでなく、心の問題解消も大事なんですね!いくらお金をかけても肌ストレスや体調が良くならない人が、心のメンテナンスもしてあげると、物凄く結果が良くなって非常に喜ばれます。時には、叱咤激励することもありますが、全ては愛ゆえですね(笑)お客様の中には『先生にパワーをもらいに来ているんです』と嬉しい事を言ってくれる人が多いです。来る時に暗い顔のお客様が帰る時には明るく元気な顔になっていると、とてもやりがいを感じるんです。

 これは失敗談なんですけどね、ある時常連のお客様を二人隣合わせのベッドで施術していたんです。一人は旦那の不倫に悩む妻(女は敏感ですから旦那の不倫にはすぐ気がつくものなんですよ)時々相談にも乗っていたり、励ましたりしていたの。隣は奥さんのある人との恋愛話(男から聞く妻への愚痴や不満)を聞いたりしていました。そう、感の良い方なら分かりますよね?まさか本当に当事者同士が隣合わせになるなんて!こんな不幸な偶然があるでしょうか?家が近所でもないんですよ!もうこれはエステシャン人生一生の不覚でした。

 もちろん二人が気づいた訳ではないのですが、奥さんが帰った後に彼女が『今、隣にいたのは○○さんですか?』

 嫌な予感がしましたが

『そうなの。え〜ともしかしたら?』

『はい、彼の奥さんですね。声で分かりました』 まじか〜(最悪)

『まさか同じエステに通っているとは!』

『そうだよね。本当にごめんなさい。次はバッティングしないように気をつけます』とは言ったものの彼女が再び来店する事はありませんでした。二人とも素敵な人だったのに、とても残念な結果になってしまった。それからは、極力隣合わせになる人の人選に気をつけるようになりました。

 でも良い事もあるんですよ!

 美顔をやっているお客様にお手入れ方法や美容液などの説明をしていると、隣に寝ていた人が精算の時に『私も美容液が欲しいです』と売れてしまったりします。それからは、隣の人にも分かりやすく説明したりしています。自分が買わされるって思うより、耳より情報を聞く方が素直に購買意欲を刺激する事になるんです。これは勉強になりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人生七転び八起き!転んで成長するものだ! @buru-doragonn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ